第3話 そして
「神技、ラストジャッジメント!」
魔王と勇者。
この二人が繰り広げる戦いは想像を
遥かに超え白熱している。
時刻は夕方5時。いまの季節、太陽が沈むの
が早いため、もう空は紺色に染まっていた。
暗い空の色とは対象に
魔王城内は光に包まれていた。
二人の攻撃が周りを照らしているのだ。
両者ともに体力はほとんど残っていない。
魔法のこのような戦いは以前もしたことがあ
ったな。
父に言われたことを思い出した。
「お前、またあいつに決闘に負けたのか。」
「残りちょっとだったんだよ。いつも最後に
負けるんだよな」
もうだめだと言いそうな表情で言った。
「なんで負けたか考えたことあるか?」
「俺のほうが、魔法の熟練度が低いとかか
な?」
父はしてほしかった返事が来なかったのか不
満そうな顔をしている。
「私の知り合いにギルド長やってる人がいる
のは知ってるだろ?」
「まぁな」
「実はお前のほうが魔法は勝ってるぞ」
「いやいやそれはないって。じゃあなんで俺
が負けるの?って話になるじゃん」
父は椅子から重たい腰を上げ近づいてきた。
そして俺の胸をぽんと叩きながら言うのだっ
た。
「最後に勝敗を決めるのはここってことよ。
そのきもちはな時には能力以上の力を生み出
すのだ。それがやつのほうが上ってことだ。
どんだけ勝ちたいと思うか。それが勝ちにつ
ながるんだ」
…………やってやる………
……信じてないけどやってやる…
「俺は負けられねぇ!」
叫び声をあげ、もう1段階気を上げた。
「こいつ!どこからそんな力が出てくるんだ
よ!」
「湧き出てくるんだよ!お前の憎たらしい顔
を見るとな!」
オーディスの魔法が徐々に押し返し、形成を
ひっくり返しそうだ。
「くそ!このままだと…」
サタンにどれくらいの力が残ってるだとか、
負けたらどうなるとか深いことは考えなかっ
た。今、目の前にいる敵を倒すだけ。オーデ
ィスはそのことしか考えてなかった。
「「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」」
真ん中でとどまっていた二人の魔法がサタン
側によりはじめたのだ。
「死ねーーーー!!」
力はとっくの昔に尽きている。前借りだとか
なんだとか考えていない。後で俺は死ぬかも
しれない。けれど、仲間の想いも背負ってい
る。こんなところで負けるわけには行かない
のだ。
オーディスの魔法はサタンを飲み込み、体の
1ミリも残すことなく消していった。
最後にサタンが「俺の負けだ」といった気が
した。
周囲は大爆発を起こし、周りの障害物を吹き
飛ばし煙で見えなくなっていた。
「うわぁーー!!」
気がつくと暗い隙間に横たわっていた。深刻
な魔力不足による体全体のしびれ。呼吸困
難。
今にも壊れそうに瓦礫から砂が落ちる。
「あ、あ、くっ、はぁはぁ」
限界まで振り絞った力の代償に俺の体は壊れ
かけていた。
「こんな…とこで……死んでたまるか」
周囲に何かないか確認すると下になにかある
のか、扉があった。
いつもならこんな扉片手でも大丈夫なのに、
今はいつになく重い。その扉を開けることが
できたのだ。
「あ、あぁ」
そのまま下に落ちていった。
気がつくと、見知らぬ部屋で寝かされてい
た。窓からいつもとは違う光が差し込んでく
る。
「ここはどこだ?」
最弱と目指す世界平和!ーゴブリンでも負けません!ー ゼロ @Amatsukaze0
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