緩やかに滅ぶ世界、僕 ①

 2020年1月中国で発生したウイルスは中国内部のみならず全世界へと広まっていった。

 最初誰もがただの風邪だと考えていたそれは、日を追うごとに感染者と死者を増やし続けていた。

 世界は混乱し、都市部では暴動が多く発生した。





 僕の生活はそれほど大きく変わらなかった。

 学校は休校になったが、もとから友達と遊ばなかった僕にとって家にずっといるのは、苦ではなかった。

 田舎に住んでいたため暴動も起こらなかった。

 塾も当然休校になったため、僕は塾に教材を取りに行った。エレベーターを待っているとたまたまあの女の子に会った。

 僕が話しかけようか迷っていると彼女から話しかけてきた。

「amazarashi好きなんですか?」


「は、はい」


「良いですよね〜」


「そ、そうですね」



 高校生活で女子と話していなかった代償は大きかった。

 圧倒的コミュ障を僕は発動していた。

 結局その日僕は彼女とまたエレベーターで鉢合わせしないように教材を急いで取り、わざわざ階段を使って早足で帰った。

 家に帰りなぜあんな会話をしたかと後悔したが何かできるわけでもなく、ただ落ち込むしかなかった。



 1週間後の月曜日、僕がコンビニへジャンプを読みに行くと、塾で会った女の子がコンビニにいるのを見つけた。

 普段なら迷わず話しかけないことを選ぶのだが、その時は話しかけようか少し迷っていた。


 だが、そこはプロチキン童貞話しかけずにジャンプを読むことにした。

 一瞬だけ目が合ったような気がしたが知らないフリをした。

 だが彼女はしっかりこちらに気付いていたようで話しかけてきた。

 彼女は遠慮がちに、小さな声で尋ねた。


「すいませ〜ん。同じ塾通ってる人ですよね?」


「は、はい」


「何読んでるんですか?」


「ジャンプです。」


「違いますよ〜、なんの作品読んでるか聞いてるんですよ〜」


「えと、呪術◯戦とかチェンソー◯ンとかです。」


「へー、それ私も好なんですよ。

 今めっちゃアツイ展開ですよねー

 ていうか、先週の冥◯さんかっこくなかったですか?、あれで一気に冥さんの株上がったんですよー。」



 彼女は意外にも話にのってきた。

 彼女が楽しそうに語るのに比例して声も次第に大きくなっていった。

 さらに彼女は今週分が見たいのか僕が見ていたジャンプを覗き込み、読み始めた。


 覗き込んだひょうしに女子特有のの甘い匂いが漂ってきた。


「ていうか今週分ヤバッ、◯相と虎◯の戦いかっこ良すぎじゃないですか.....

 それにチェンソー◯マンも.......」

 

 


 ひとしきり語り、そこでようやく彼女は自分が周りの客に見られていることに気づいたようだった。

 僕がちょっと近くの公園で話しませんかと言うと

 彼女はうつむき、顔を赤らめて


「す、すいません。」


 と小さく呟き店外へ出た。

 僕は急いでジャンプと適当に選んだお菓子を買うと彼女のもとへ行き近くの公園へ向かった。







 公園に着くと彼女は


「さっきはすいませんでした。」


 と勢いよく謝ってきた。

 相当恥ずかしかったのだろう、まだ顔が少し赤かった


「い、いや全然大丈夫だよ。」


「私、すぐ周りが見えなくなって、それで今までいろんな人に迷惑かけてきて.....」


 彼女は申し訳なさそうに黙り込んだ。

 なにかフォローしなくちゃと思ったが何と話しかければいいか迷ってると先に彼女の方が口を開いた。


「急に話しかけて、興奮して喋り倒して、落ち込んで黙ったり...本当にすいません.....」


 僕は何か返事しないとと思い


「だ、大丈夫だよ。

 僕だって人と話すの上手じゃないし...

 取り敢えずジャンプ読んで元気だしてよ。

 まだ途中だったでしょ。」


 少しの沈黙の後彼女は俯いたまま


「ありがとうございます....」


 と言い、ジャンプを読み出した。




 作者コメントまで読み終わったところで、彼女はまた話しかけてきた。


「先程は本当にすいませんでした。」


 今度は落ち着いていて、声色も明るかった。


「私、学校とかで漫画とか音楽とか趣味を話せる友達がいなくて、塾で同じキーホルダーを付けてるの見たとき、いつか話したいなって思ってたんですよ。」 


 彼女は嬉しそうに話した。

 その後少し悩んで


「今から少し話しませんか?」


 恥ずかしそうに彼女は言った。



 その後僕らは30分程度漫画や音楽の話をして解散した。


 家に帰り名前を聞いてなかったことを思い出したが、それよりも久々に女子と会話できたことで頭がいっぱいだった。





 水曜日

 マガジンを読みにコンビニへ行くとあの子がいた。

 話しかけるか否か迷ったが僕は彼女に話しかけることに決めた。


「あ、あの〜」


 僕が話しかけると、彼女はビクッと驚いてこちらを見た。


「びっくりした〜

 話しかけるなら肩でも叩いてよ」


 彼女は月曜のおどおどした様子とは変わって親しげに言った。

 僕が謝ると彼女は


「いや大丈夫、大丈夫。

 まぁ、驚かせた罰として今週のマガジンおごってよ」


 と冗談っぽく言った。




 その後マガジンを買い、また近くの公園へ行った。

 彼女は先に公園に到着しており、ブランコを漕いでいた。

 僕が近くに寄っていくと

「おう。ご苦労ご苦労」と機嫌良さそうに言った。


「今日、テンション高くない?」


 と僕が尋ねると


「そう?いつもこんな感じだよ」


 彼女は答えた。しかし、月曜日の情緒不安定ぶりが気になった僕は


「でも月曜日そんなんじゃなかったじゃん」

 と聞いた。


 そう尋ねてられると彼女はバツが悪そうに


「あれは....

 ちょっと気が動転しててね.....」


 と答えた。


「まあいいじゃん。月曜のことは忘れようよ。」

 彼女は気を取り直すようにそう言った。



しばらくして


「ねぇ私の名前知ってる?」と尋ねてきた。


「え、知らないよ」


 僕は当たり前のように言った。

 彼女は笑って


「だよねぇ」

 と言った。


「私たち、出会いは短いけど貴重な趣味を話せる仲間じゃん。だから....」


 彼女はそこで少し溜めて、恥ずかしそうに言った。


「じ、自己紹介しない?」

「い、嫌?」

 不安そうにこちらを見る。


 その恥ずかしそうで、不安げな声と表情に僕もなぜか少し恥ずかしくなった。


「あんた先に自己紹介して」

 彼女は自分が恥ずかしいのを隠すように僕に言った。


「えと、、、

 名前は神田かんだ れい


 僕がそう言うと彼女は


「どもってんじゃんww 」

 と煽るように言ってきた。

 僕は恥ずかしくなって

「はい、終わりっ」

 と、言うと

「ほらねっ、恥ずかしいでしょ」

 と嬉しそうに彼女は言った。


「じゃ、自己紹介するよー

 私の名前は川崎かわさき 玲奈れな

 17歳のぴちぴちJKでーす。」


 さっきの恥ずかしそうな様子ははどこかにいったようで、楽しそうに自己紹介した。

恐らく彼女は根明なのだろう。


「さあ、ここでLINE交換タイムでーす。」

 なにかのイベントの司会者のように彼女は言うと、まだ状況が掴めていない僕に

「するでしょ、交換」

 と急かしてきた。

 言われるままに僕は彼女とLINEを交換した。




〈次回〉

人生で初めて母親以外とLINEを交換しうきうきの玲。

ある日夜にも関わらず玲奈から呼びだされる。

そこでなんと今、家に親がいないから来ないか?と誘われる。

夜、家、親がいない、この3つが導き出す答えはそうただ一つSEX。

玲は童貞を捨てることができるのか?

次回もサービスサービス



〈追記〉

エロシーンが全く無くてすいません。

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終わる世界と僕と彼女の恋愛事情 @siki039

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