残
それから五十年を過ぎた現在。
どこかの誰かが、インターネットに、とある画像を投稿する。
「山奥の寺に肝試しにいったら凄いものを見つけた」
そんな文言とともに、「執書」と書かれた黄ばんだ封筒と、その内容は、画像を介して世界に拡散される。
それは瞬く間に電子の海を駆け巡った。
人々の反応は様々で、一部では共感が、また一部では考察が、更にはそこから空想された物語や絵までもが誕生する。
たった一晩の内で、ネットを親しむほとんどのものが知る存在となった。
友達付き合いは良く、顔もそれなりに整い、勉強もスポーツも平均以上にできる。
そんな彼女が今日、友人のカラオケの誘いをドタキャンし、今朝、コンビニでプリントアウトした画像を胸に抱えている。
校則を破ったこともない彼女が、校舎の出入り禁止の屋上で、夕陽を見つめながら立ち尽くしている。
「執書」の画像を印刷した紙を抱き締め、涙を一筋流しながらも、口を笑ませて。
「あぁ……あぁ」
と、何かに気付いたかのように数度、唇を震わせた。それから彼女は。
「これ「執」っていうんだ……」
と、一言呟いた。
彼女は平凡な、どこにでもいる女子高生だ。
執書 賽野路人 @sainorobito
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