化けZozoンビ

@kuooke

第1話

  苦労。疲労。過労。


 最近は何も口にしていない。


 眠りもできない。


『幸』という文字は俺にはない。


『辛』という字は俺にある。


 1本付け足したら『辛』から『幸』になるが、頑張っても一本付けれない。


 光景がフラッシュバックする。


 走馬灯ってやつだ。




 ほんと、バカバカしいよ。


 あの頃俺はどの会社でもいいって、思ってしまった。


 辛いけど、報酬が沢山あればいい。そう思っていた。


 けどその考えは間違ってた。


 確かに報酬は多いが、辛すぎる。別に、一日分の仕事を1時間でやれとかそういうのでは無い。


 ただ、時間が多すぎるのだ。


 24時間ぶっ通しでやることはある。


 だから、報酬が多くたって、それを使えないんだから、意味が無い。




 俺は、もう限界になり倒れてしまいそうになる。


 仕事の帰りにそう思った。


 耐える。


 いつまでそういう人生を送っていたのか、5年ぐらいだろう。




 今日もそうだ。


 ああ、もうこのまま倒れてしまおうか。


 そう思っていたが、冷静になる。


 俺には後輩が居るんだ。今倒れたら、後輩が俺の仕事をやらなきゃならない。


 なら、耐えるしかない。


 そう、耐えるしかないのだ。


 耐えて、またあの仕事へと行く。そしてまた同じことを繰り返す。




 だが今日でそれも終わり。


 俺は限界を知った。


 人間は過労に耐えられない。


 俺は今日、過労死をした。














 自分でも情けない死に方だと思う。


 でも、俺は楽になって天国へと行きたい。




 と思っていたのに。


 思っていたのに。


 なんだこれは。




 目の前に広がるのは、洞窟みたいな空間。


 ぷくぷくと、蒸発する緑の沼。それはまさに毒沼。


 そして、毒沼に浮かぶ人間の頭蓋骨や、腕の骨。


 その奥にも、骨がある...。骨?骨...


 骨、骨、骨。


 俺の周りにも骨がある。


 俺の顔は恐怖に包まれる。


 俺は恐怖に耐えられず、叫んでしまう。


 そう、叫んで、


 しまう。




 俺はこの場を離れようと足に力を入れる。まず、ここを離れなきゃ。


 いつまでもここにいたら精神的にやばい。


 俺は後ろを向く。


 向いた。そしたら壁があった。


 硬い。叩いたら硬かった。


 何度も叩いたと思う。その証拠に、拳の形が変化している。




 俺をあの、人間の骨がある道を歩けと?


 無理だろう。ましてや、さっき過労死を遂げた俺にはできない。




 俺はこの場で膝から崩れ落ちる。


 神様は俺をなんだと思っているのだろうか。


 俗に言うブラック企業へ入れ、過労死し、そして今の現状。


 俺に何をしろと?




 俺は骨の道を俺は見る。


 すると、そこにはなかった物があった。


 いや、居た。


 そこには、髪が所々引きちぎられたような傷があり、脳みそも見えていて、目がパンパンに膨れ上がり、口は抉られ、閉じていても舌が見えている。


 そして、内蔵が全部見えている。


 血管はパンパンに膨れ上がって、黒色に変化している。


 ゾンビ。


 第一印象はそうだった。


 だが、昔見た映画とかでは、その体はか弱く、すぐ体がちぎれるような体だったのだが、このゾンビは筋肉が凄い。腕が、巨大化したんじゃないかとも思われる程に。




 「グアアアアァァァ!!」




 ゾンビが叫んだ。


 俺はもう恐怖で心臓が飛び出そうだ。


 ひぃっ と、俺は変な声を出してしまう。




 ゾンビは近ずいてくる。


 もう、近ずくなと、言葉に出来ないほど、俺は恐怖の色、一色に染まっていた。


 すると、ゾンビは、何かを吐いた。


 俺は危機一髪、目の前に右腕を上げて、目に入らないようにした。


 だが、ゾンビが吐いたのは、酸だった。勿論、俺の右腕は溶ける。


 そして俺の右腕はぐにゃぐにゃになってしまった。




 「うあ゛あ゛あ゛あ゛あぁぁ!!」




 俺は痛さのあまり、叫んでしまった。


 俺はゴツゴツの岩の上で転び回って叫び続けていた。


 顔の周りにも、酸はついている。


 輪郭がぐにゃりとなる。




 「い゛でえ゛え゛え゛えぇぇ!!!!」




 目は大丈夫だった。俺はゾンビを見る。


 すると...何故か、ゾンビの姿はない。


 と思った瞬間、左腕に、熱く、焼けるような痛みが走った。




 「あ゛あ゛あああああ!!!」




 いつの間にか、ゾンビは俺の後ろに回っていた。


 そして、俺の左腕を引きちぎった。


 俺は、失血死をすると思っていた。


 右腕を溶かされ、左腕を引きちぎられ、俺は死ぬと確信した。


 だが、いつになっても痛みは引かない。




 〔酸耐性を習得しました〕


 〔痛覚耐性を習得しました〕




 何か頭の中でそう聞こえたが、今の俺には聞こえていない。




 〔ストレス耐性を習得しました〕


 〔恐怖耐性を習得しました〕




 〔痛覚耐性のレベルが最大になりました〕


 〔ストレス耐性のレベルが最大になりました〕


 〔恐怖耐性のレベルが最大になりました〕




 その瞬間、体が軽くなった。


 痛みはまだあるが、少し和らいだ気がする。




 〔冷静を習得しました〕




 俺は、ゾンビの目を見る。完全に獲物を見る目をしている。


 よく見れば、心臓が完全に見えている。




 「ああああああ!!」




 俺は、痛みを振りほどいて、酸でドロドロになった右手を伸ばす。


 伸ばした先は、ゾンビの心臓。


 あれを引きちぎり出せば、やがてこのゾンビも死ぬはずだ。




 俺は心臓を掴む。


 ドロドロの手なので、掴むのは難しいが、何とか掴む。


 そして、最大の力を使って引きちぎる。




 「ああああぁぁぁ!!!」




 ブチブチっと、嫌な音を立てて、心臓を取る。


 俺は、その場で倒れ込む。


 勝てたかもしれない。と思い俺は引きちぎった心臓を見る。


 これで勝利――


 と思ったが、ゾンビは何事もなかったかのように、立ち上がる。




 「ガアアアアアアアァァァッ!!!」


 


 再び酸が、俺に降り注ぐ。


 今度は足を狙われた。


 足を溶かされ、俺は立てなくなる。




 〔酸耐性のレベルが最大になりました〕




 痛みは何故か少ないが、足を溶かされたという事に気持ち悪さを感じる。




 するとゾンビは、俺の右足を食い始めた。


 酸で、感覚が無くなったのか、痛みは感じない。


 だが、これはまずい。


 俺は直ぐに左足でゾンビの脳みそが見えている部分を蹴る。


 だが、これは効果がない。


 直ぐに俺の右足は引きちぎられる。




 「うああっ!くそっ」




 ゾンビは俺の左腕と右足を食べ始める。


 これはチャンスだ。と思い、直ぐそこの毒沼みたいな沼へ、ゾンビを思いっきりタックルする。




 「ガアアァッ!??」




 そのままゾンビは、毒沼へと、沈む。


 だが、まだ俺の感は ゾンビは死んでいない と言っている。


 予想通り、ゾンビは泥沼からはい出てきた。


 すぐ俺は近くの尖った人の骨でゾンビの脳みそ目掛けて、ぶっ刺す。




 「グァアアアァアァァアッ!!!」




 これは効果があったみたいで、ゾンビが叫ぶ。


 俺はもっと骨を脳みそにぶっ刺す。


 そして、尖った骨が無くなったら、刺さっている一本の骨を、抜いて刺してを繰り返す。




 やがて、ゾンビは動かなくなる。




 〔レベルが8600上がりました〕




 そんな声が俺の脳内で再生されたが、それを聞く体力はもうない。


 俺はゴツゴツした岩に、寝っ転がる。


 そのまま俺は気絶したみたいに寝た。

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