第110話 エピローグ

「トオルの勝ちや!!!!」

「「「「おぉ!!!」」」」


 盛大な歓声がトオル達を包む。

 そんな中こあくまがトオルの元に駆け寄ってくる。


「とおる~!!!!」

「あはは!! やったよ! 僕ら、やれたんだね!」


 こあくまと手を掴み喜びあった。

 そんな二人の前にレイネルが近づいてくる。

 

「――トオルの勝ちだね。――」

「僕じゃない…… 僕とこあくまちゃんの勝利だよ!!」

「――うん。そうだね。リドリーもおめでとう。そして……――」


 レイネルがトオルの頬に顔を近づける。


「――《エンジェル・キッス》、これはご褒美。――」


 ちゅっ!


「えっ!?」


 トオルはいきなりの事態に顔を赤くして、戸惑う事しかできない。


「あー!!!!!」


 そんな横で、こあくまが大きな声を上げる。

 レイネルはそんなこあくまを無視して、倒れるサドラーに近づく。


「――サドラーは私が連れて行くわ。――」


 そう言うと、レイネルはサドラーを抱き上げる。

 サドラーは手をだらりと垂らしながらぐったりとしていた。


「――それじゃ、二人とも仲良くね。――」


 天使の羽をはばたかせて、レイネルは空に消えていく。

 それをずっと見つめていたトオルは小さく、「レイネル……また会えるよね。」っとつぶやいた。


 しかし、別れの余韻は直ぐに消える。


「いたっ! こあくまちゃん、頬を引っ張らないでよ。」


 ふくれっ面のこあくまの顔がトオルの頬を引っ張る。


「はなのしたのばしてる! そういうのだめ!!」

「僕、鼻の下なんて伸ばしてないよ……」


 サドラーとレイネルが消えた後は凄く大変だった。

 今回の騒動の一旦を担っていたジライヤ社長やゼオン・コポレーションの面々はマスコミの対応に追われている。

 この戦いに関わったトオルとこあくまも、事情を知っている重要人として取り囲まれてしまう。

 解放されたのは既に辺りが暗くなってからだった。

 一日中、話し続けて、ムスメステーションでこあくまもぐったりとベッドに倒れ込む。

 

 ムスメステーションでは、レイジ&エリーやツバサ&くぅやサオリ&ヒートとも話をした。


「あいつと、一対一のバトルをする言い出した時は驚いたぜ。バトル中もひやひやばっかりだしな。」

「れいじのげぼくにしてはやるじゃない!」

「即なったが、まさかトオルが旅にでてるとはな。こりゃ、強いライバル出現かいな。」

「ツバサ君のお友達……」

「ありがとうね。トオル! パパを止めてくれて。僕、感謝しかないよ。」

「とおる! こあくま! こんどはわたしたちともあそぼうね!」


 懐かしさに花を開かせて、その日の一夜を過ごしたあと、ダイバからそれぞれの旅路についた。


「それじゃ! こあくまちゃん、僕らも旅にもどろっか!」

「うん!」


 そう言って、二人は、様々な場所を見て歩く。


☆☆☆


 ダイバから出て、当初の予定通りの道を進んみ続けて、トオルはエンジュの田舎に戻ってきた。


(思えば、短い旅だったけど、凄く濃い旅だった。僕はここに戻ってきた。戻ってこれた。)


 ぐっと拳を握り、トオルは今までの旅を思い出す。


(いろんな人に出会って、交流して、いろんな経験が僕を強くしてくれたんだ。)


 感慨深い。

 今までは一人で歩いていた道を今は、こあくまと二人で歩いてる。


「ここがとおるのおうち?」


 そのまま進み続けていくと、家が見える。

 白い小さな家。


(ここを出てから、何日も過ごしてただっけ……)


「うん! そうだよ! 改めて、ようこそ! こあくまちゃん!」


 部屋の掃除をしている【眼帯メイド】がいた。

 トオルは小さく手を振る。

 トオルに気が付いた【眼帯メイド】は急いで部屋に駆けこんでいく。


 その部屋から一人の女性が急いで顔をのぞかせる。

 そして、 目に涙を溜めながらも笑顔で母が言ってくれる。


「トオル、おかえりなさい。」


 その顔を見て、トオルもつられて涙目になりながら、それでもとびっきりの笑顔で答えた。


「カーさん、ただいま!!!! 僕ね! カーさんにいっぱいお話ししたい事あるんだ!」

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ムスメと旅をする REX @REX333333333

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