Azmidiskeー1ー
規模の小さな山賊だったのか、奪った小屋で一泊しても襲撃されることはなかった。おそらく残党はいないだろう。
夜明けとともに少勢の身軽さを生かし、丸一日で都市に戻ると――。
「た、大将!」
「緊急事態です」
夕暮れ時の港湾都市イコラオスの城門前で待っていたのは、どうやらウチの兵士らしかったが、健気に主人の帰りを待っていた、というわけではないらしい。
「落ち着いて話せ。戦闘状況か、その前の段階か?」
緊急事態と言うわりに、城門は開け放ったままだ。覗き見える町には、篝火も点ってはいないし、人の動きも少ない。戦闘状況というわけでないのは確実だが、他に慌てるような出来事があるとは思えない。宣戦布告されたとかか? いったいどの国から?
しかし、見張りの兵士はろくに事情も説明せずに俺の腕を取って、引っ張っていこうとしている。
「と、ともかくコッチです」
「おい! 報告ぐらいきちんとしろ! ぶっ殺すぞ」
暴れてやろうかとも思ったが、俺以外の後ろが素直についてきているので、ここで暴れても無意味だ。
ったく、酒場の喧嘩とかの理由だったら、給料棒引きしてやるからな!
町の大路を突っ切ると、先に町に帰り着いていた兵士が徐々にだが合流を始めた。ただならぬ雰囲気……のような、そうでもないような。いや、きちんと武装していないから緊張感を感じられないんだよな。
良い兵士ってヤツは、どんな状況下でも武具の着こなしに品がある。鎧を傾きかけてつけてたり、槍だけ担いでたりするのは雑兵だ。
本当に、俺がきちんと見張ってないとこれだから……。
と、そこで不意に閃きが走った。
あ……もしかしなくても、山賊の一件で町の偉いさんに呼び出されてるとか、そんな話なのかもしれない。
めんどくせえなぁ。
余計にやる気はなくなったが、後に続く二十名の手前、放置して適当に処理させるって言うわけにもいかず、俺はさっきよりも重い足取りで港への道を先導する兵士について行った。
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