Elnathー13ー

 久しぶりに俺に向けられた至近弾を槍で弾き、その石を放った投石兵にお返しとばかりに槍を投げつける。

 仕留めた。

 これでヤったのは、計十二人。

 しかし、敵陣を見るに乱れは少ない。敵兵の損耗はまだ少ないな。

 いや、それもそうなのだ。櫓の兵士と俺だけでは、完全に押し返せはしないだろう。数も四倍程度敵の方が多い。梯子にへばりついているだけの味方にも、投槍をさせるか否か。

 ……ん、う。

 迷う。が、将としてここに立っている以上、俺が判断し、指示を出すしかない。どうするか……。

「正門防衛に成功! 侵入した敵の先発隊の殲滅に成功!」

 伝令の声に味方の士気が上がった。敵を削りきれずに退却されるのは拙いが、勝負に出るのはここしかない、か。

 強行してきてくれ、と、願いながら俺は――。

「総員、反撃! 投槍攻撃を始めろ!」

 梯子を登ってきた味方から槍を受け取り、他の味方と合わせて、今度は狙いをあまりつけずに広範囲に槍をばら撒く。

「投げ続けろ! 下手に狙うな! 手数で押せ!」

 敵の被害が、目に見えて増えた。

 どうする? 来るか?

 こちらからの急な反撃による被害から、立ち直ろうとする敵の動きを見る。敵のやや左翼側に人が集まり始めていた。

 退くのか?

 焦燥感で胸が少し苦しい。待つのは嫌いだった。味方が俺くらい強ければ、二~三十人ほど引き連れて斬り込んで皆殺しに出来るのに。

 ざわ、と、敵の陣が波打つのが見えた。

「梯子のヤツは一旦下がれ!」

 目は敵陣に向けたまま、鋭く号令する。

 敵のうねりは……退かない! それが確信できた瞬間、地鳴りのような鬨の声が響いてきた。

 ふ、と、ようやくの展開に頬を少しだけ緩め、味方に命じる。

「まだだ、引き付けろ。梯子が掛かるまで顔を出すな」


 傲岸に、不遜に敵を睨みつけ、右手を突き出し、手招きする。

 さっさと来い!

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