Elnathー11ー
司令官が、あの場では門を入ってすぐの場所を広場にして防衛線を行い事を同意したものの、きちんと行動に移すのか疑わしかったので、その足で城門へと向かう。キルクスは、いつも側に居る二人に命じて、拠点内の兵士への懐柔を始めている――多分、まず虚言を流布させ、次いで甘言で誘うのだろう――ようだったが、キルクス本人は俺についてきた。別段、出来ることもないだろうに。
城門では作業がもう始まっているらしく、補助兵の掛け声がそこかしこから聞こえてきていた。
門の両隣の兵舎を崩して、柵や地面に設置する大盾を作っている兵士のひとりに訊ねてみる。
「どうだ?」
「ちょっと勿体無いですね……。折角苦労して作ったので」
秋の月に入ったとはいえ、涼しいとはいえない気温だからなのか、上半身裸で作業している補助兵は、額の汗を拭いながら答えた。
「ん? 奴隷に作らせたんじゃないのか?」
鎌を掛ける意味で訊ねると、補助兵は少し恥ずかしそうに頭を掻きながら言った。
「まあ、そうなんですけど……」
手柄として自慢して褒められたかったのかもな。いや、労いの褒賞目当てだったのかも。
「ちなみに、奴隷は?」
さり気ない様子で更に訊くと、なんでもない顔で返事をされた。
「この近くの村で調達したのなんで、終わったらすぐに殺しましたよ。内応されたくないですしね」
「そうか」
エレオノーレには、とても聞かせられないな。戦場で調達した奴隷の使い方としては間違っていないが……。なんだか、少し、もやもやした気分だった。
キルクスが、俺の様子に気付いたのか、なにか? と、目で訊いてきたので軽く笑って首を横に振ってみせる。
「死体の首を敵陣目掛けて投げつけるなり、死体を城門に吊るせば、威嚇の効果があったんだがな」
「そこまでは思い付きませんでした。どうぞ、今後存分に」
如才無く俺を褒めた補助兵と、そこまでしますか? と、逆に訊きたそうな目のキルクス。
「……ああ、そうだな」
返事は硬い声になった。
なんだろう、我ながら少しらしくないな、と思う。敵を見て、殺している時は昔と変わらない高揚感に包まれているのに、時々半端にエレオノーレの声が思考を邪魔する。
キルクスが、なにか? と、訊いている気がしたが、俺は答えずに障害物を作っている味方を、厳しい目で見てしまっていた。
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