第8話
咲希と諒は、何事も無かったかのように帰路についていた。咲希は先程の諒の行動に内心、まだドキマギしたままでいたが、諒は話を繋げるのが上手く、咲希も段々とそれに乗せられていつもどうりのペースで会話をしていた。
咲希は昨日から、諒とどう接するかを考えていた。幼馴染の男と二人きりで毎日一緒に登下校するのは正直、周りの目も、自分のらしくなさも気になった。だが驚くことに、今の咲希と諒は周りが見る通りのそういう関係だ。少し前にそういう関係になった。咲希には関係の変わらなさ故にそれが未だに信じられず、昨日までとは違う意味で諒とどう接すれば良いのか考えていた。
「変態って言ってたけどさ、あれどういうことなの?」
なんとなく、咲希は引っかかっていた言葉について聞いてしまう。聞いてもどうせ参考にはならない、触れない方が良かったのではと後から思った。
「え?あの時言ったことそのまんまだよ。
咲希ちゃんが昔から大好きで、かわいくて耐えられないから、犯…抱きたくて仕方ないってこと。」
「オブラートに包んだつもりかもしれないけど、ぺらっぺら。」
咲希は今ここが電車の中でなくてよかったと心底思った。諒は先程の状況だけでなく、いまもずっとこうなのか。こんなにストレートに、頻繁に愛を伝えられては、咲希も照れていいのかすら分からなくなる。それと言葉が過激すぎる。
「でも、絶対に無理矢理はしないから!!頑張って滾る思いを抑え込むね。」
「うん。応援してる。」
そう素直に言う諒がなんだか微笑ましいと咲希は思って自分が少し怖くなる。これは慣れだ。完全に慣れだ。諒は足を止め、咲希の方に真っ直ぐ体を向けた。丁度2人の家の前だった。
「こんなこと言ってるけど、俺、咲希ちゃんとキスしたりハグしたり手繋いだり、ロマンチックなデートしたり、家でゲームしたり、美味しいもの食べたり、幸せな新婚旅行行ったり、親になって幸せな家庭築いたりしたいから!最後のは咲希ちゃんの意思を尊重するけど。」
咲希が壮大な話についていけてないまま、瞳を輝かせながら諒は続けた。
「だから咲希ちゃん、デートしよう。今週末空いてる?」
「う、うん。」
咲希の人生初のデートは想像より早く、そしてよりあっさりと、決まった。
長山くんは変態。 傘井かだ @kasai_kada
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