すれ違いの宇宙

十六夜

第1話「教授と助手」


「教授!また一つ、生命体が居る可能性が有る星が見つかったそうですね」

「そうだね。これで候補の星は4035個までに膨らんだ事になる」

「という事は、我々以外にも知的生命体が居る確率がグンと上がった!そう考えて良いですよね?」

「まあ、その辺りは何とも言えないね。これだけ広大な宇宙だから、居てもおかしくはないだろうけどもね」

「教授はその辺については、いつも悲観的ですよね?何故です?我々の様な宇宙物理学を研究する者にとっても、夢の有る話じゃないですか」

「夢は夢だからこそ良いのではないかね?ま、学生の内は夢を大いに見るものだがね。よし!では君に聞こう。これはテストだ。何故、我々は我々以外の知的生命体に遭遇しないのか」

「え?いきなり?テストですか?」

「うむ。内容いかんによっては落第もあり得るので、慎重かつ大胆に考えたまえ」

「ひどい……夢が有る話から世知辛い現実へ……」

「夢はあるぞ。何故知的生命体に遭遇しないのかを考える事は、遭遇するための方法論を逆説的に考える事にもなる。あと、面倒なのでこれからはざっくりと、知的生命体ではなく宇宙人という呼称で話を進める事にする。いいね?」

「あの、正解はどうやって決めるのですか?」

「うむ。考え付く限り話してみたまえ。総合的に判断する」

「そうですか。納得行く様な行かないような……」

「グズグズ言ってると落第させるぞ」

「おわっハラスメントっぽい。でも、楽しそうだからやってみます。ええと、まずは生命体はいるけど、我々の様な科学力を持っていない」

「進化の度合いは生命体ごとに違うだろうね」

「そもそも違う次元にいる」

「マルチユニバース説かね?その場合では、この我々の居る宇宙には、宇宙人は我々だけという事になるね」

「はい。でもそれだと出会わないだけで、量子論的に存在する別宇宙に無数に居る可能性が有ります」

「多元宇宙だと、別宇宙での我々の可能性もあるがね」

「はい。あとは……的外れな捜索をしているとか」

「ふむ。では、現行のハビタブルゾーン、生命生存領域についての考えを述べたまえ」

「はい。生命体や宇宙人を探す手掛かりは、私たちの星と同じか、似た環境で有る星を探す事が重要です」

「うむ。それが今4035個見つかっているんだね。では、その候補の星々達は、どんな条件が我々の星と同じかね?」

「はい。まず、乾燥していて水が有りません。大気の成分は二酸化炭素が9割。大気の温度も300度以上ですね。大まかにはこんなところでしょうか?」

「うむ。合格だ。きっと、我々以外の宇宙人が居るとしたら、同じ方法を取って自分達以外の生命体を探すだろう」

「お互いが同じ探し方をしていれば、いつか出会いますよね?」

「そう願おう」

                                    

                   完

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