用語集(ネタバレ注意)

※注意! この用語集の内容は第壱篇『悪鬼討滅篇』のネタバレを含んでいます。

 五十音順で記載。






葦原あしはら

 物語の舞台となる島国、または便宜上物語舞台の世界そのものを差す。


 葦原は大別して四つに分けられる。それぞれ、みかどの住まう極寒ごっかんの地神居かむい、大きの人々が住む神州しんしゅう、黒い水と消えない炎により人の住めない土地となった死国しのくに、最南端に位置する竜宮りゅうきゅうの四つの島国からなる。


 その島々の形と配置から、竜に例えられることもある。

 帝の関係者は葦原をあし原野げんやとも呼ぶらしい。


 鎖国により諸外国との国交を断ってから二百年が経とうとしており、許可のない船舶での移動は固く禁じられている。



異能いのう

 葦原に住む者が、ごくまれにその身に宿す特殊な力。

 世界の有り様に干渉し、世界そのものを振るう力。世界をりっする力とも呼ばれている。


 異能は一代限りの突然変異的なものであり、遺伝することはまずない。

 特殊な血筋の家系や、なんらかの手段をもちいることで受け継ぐことが可能といわれている。


 異能には大まかな分類がされており、その異能の見た目や性質でもって分けられる。この詳細については第弐篇にて。



異能使いのうつか

 異能を扱う者を差す。

 生まれもって手にした力を扱いきれる者は少なく、さらに自らが異能使いであることに気づかず、異能を使わずに一生を過ごす者も少なくない。

 異能を持たない一般人に比べて身体能力や体格に優れ、さいに恵まれていることが多い。



えんじゅ

 天帝てんていとも槐帝かいていとも呼ばれる存在。現人神あらひとがみ

 二千年以上の時を生きる葦原の統治者。

 百年単位での眠りにつき、目覚めるたびに勅令ちょくれいを出し世の乱れを律してきた。逆に言えば、世の乱れがあるときみかどは目覚める。


 帝は神居からは出て来ず、その配下が神州に出向き勅令を伝える。そのため、帝の姿を見たという者は神州ではほぼ皆無である。



彼方花おちばな

 日暮子村かくれごむらにのみ群生ぐんせいする白い花。

 輪生状に並ぶ八つの花弁が特徴で、一年中絶えず咲き続けている。

 御八家の家紋にもなっており、特別な花と認識されている。


 鬼の世界永夜とこよへの道が開いたとき、その道から降ってきたのは赤い彼方花だった。

 泥繰はその赤い彼方花を彼岸花ひがんばなと呼んでいたが……?



日暮子村かくれごむら

 神州のちょうど真ん中、海沿いに位置する田舎。

 道路は舗装ほそうされておらず、家もほとんどが木造、街灯なんてものも無く、商店と呼べるほどのものもない。


 周囲を山と海に囲まれ、村への出入りは車一台がやっと通れる程度の横穴しかない。その穴を塞いでしまえば村は完全に外界と隔絶かくぜつされる。

 この村にのみ群生する彼方花という花が唯一の特徴といっていい。


 村人は外界との接触は最小限ですませ、外部の者に対して非常に排他的。

 五百年前から人喰い鬼の伝承が言い伝えられ、その当時より御八家に仕える守人を排出はいしゅつし続けてきた。


 村人達は知らなかったことだが、村の各所に人喰い鬼どもが封じられ、その封印の要となっていたのが櫃木神社の御神木だった。


 村の名の由来は、日暮れが鬼の現れる時間だったこと、その鬼から隠れ潜むことから名付けられたと言われている。



御八家ごはっけ

 《昇華しょうか》の伊鎚いづち、《設定せってい》の鋳楔いくさび、《遮断しゃだん》の簾縣すがた、《収束しゅうそく》の帯包おびかね、《内包ないほう》の櫃木ひつぎ、《消失しょうしつ》の蛇乃目じゃのめ、《制御せいぎょ》の千鎖ちぐさり、そして《切替きりかえ》の御剣みつるぎ

 合わせて八つの家系よりなる異能の血族集団。


 五百年以上前から協力関係にあり、互いの異能使いを貸し与えたり嫁がせることもある。だが決して仲がいいというわけでもなく、互いに牽制しあっている面もある。

 御八家の目的はより血を濃いものとし、原点へとたどり着くこと。そのためにはあらゆる手段をとる。たとえそれが人道に反することであっても。


 元来、異能は遺伝せず一代限りで終わるが、御八家の血に連なる者達はその異能を受け継ぐことができる。

 宿す異能は他に類を見ない特殊なもので、世界のありようそのものに干渉する力がほとんどである。

 ただし、御八家の者にはその異能の強さに比例して人格に問題が生じる。彼等はこれを呪いと呼ぶ。



ジンキ

 伝承中にて御八家を手助けした存在。

 人にして鬼、鬼にして人。

 伝承によれば、櫃木神社の御神木が立つ場所に眠っているとされているが、御神木が焼失してその中から出てきたのはガランだった。


 第壱篇終盤、泥繰でくを倒すべくクオンとガランがソラの異能により一体化、その状態をジンキと呼んでいたが、実際の傀がどのような存在だったのかは伝承中でも触れられておらず、ほとんどが謎のままである。



永夜とこよ

 人喰い鬼どもが住まう異界。

 永遠の夜の世界、赤い彼方花が咲いていること以外、謎に包まれている。



人喰ひとくおに

 葦原とは異なる世界に住む異形の者ども。

 七尺を超える巨躯きょく、金属質の肌、強固な外骨格、そして頭部に角を有する、金属でできた生命体。

 人を喰らうことでその知識や技能、そして異能までもを己のものとする能力を持つ。


 五百年前に日暮子村かくれごむらへと現れたが、当時の御八家によりその大半が討伐とうばつ、残ったものは村の各所に封印されていた。

 ながきにわたる封印により、そのほとんどがやせ細り正気を失っている。知性の欠片もなく、ただえを満たすべく人へ襲いかかる。


 王と呼ばれている咒童じゅどうという個体と、それに仕える四将なる鬼がいたらしいが、泥繰以外の消息は不明。

 ガランこそ咒童ではないかと考えられているが、本人に記憶がなく、また証言者も泥繰以外いないため真実はさだかではない。



御霊鋼みたまはがね

 鬼の骨のずいを溶かし精製せいせいした金属。

 精製の精度にもよるが非常に頑強、かつ強靭。

 この金属で造られた武器はいずれも赤い色味をび、人肌程度の温度を宿す。


 鬼の皮膚ひふを傷つけられる唯一の金属であり、そのために御館様一派は全員が御霊鋼で出来た武器を有する。

 それ以外にも通常の金属に見られない特性があるようなのだが……?



守人もりびと

 御八家に仕える者達のこと。

 名前から護衛役と思われることもあるが、実際には近侍が近い。


 御八家の人間は、その多くが精神になんらかの問題を抱えている。

 それは私生活にすら支障をきたす場合もあり、その補佐を担うのが守人である。

 ほとんどの守人が日暮子村の出身で、そこ以外から輩出された守人はほんのひと握り程度しかいない。


 異能使いであっても特別扱いされることは少なく、多少使い勝手のいい守人程度に思われていることがほとんどである。



結女様ゆいめさま

 村人や御八家の者がソラに対して使う呼称。

 櫃木の巫女は代々この名で呼ばれており、その由来がどこから来たものなのかはほとんどの者が知らない。

 ごく少数の、御八家の者以外は。



結女ゆいめ太刀たち

 櫃木神社の本殿の中、奥の間と呼ばれる場所に安置してある御神体。

 人の身で扱うには長大で、まるで人以上のものの使用を考えられて造られたかのような大太刀。


 半ばまで地面に突き刺さっているが、五百年近くそのままでも白銀の刀身には錆の一つもない。

 決して折れず曲がらず朽ちる事のない、永久に不滅の刃。


 なんらかの異能を有すると言われており、それによって異界への道を断ち切ることに成功した。


 第壱篇終盤、ジンキとなったクオンとガランが引き抜いたとき、自然と空蝉うつせみという名が思い浮かんだ。

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