chapterend
――あれから三日たった。
突如として現れた「恐怖の大魔王」は、三日三晩侵攻を続け、東京のほぼ全域を覆いつくしたそうだ。
そうだ、というのは主要となる報道機関が機能しておらず、地方報道機関やネットでどうにか情報を入手している。
そろそろ海外ニュースも来そうだけど――ホームページや動画サイトになかなかアクセスが出来ない。皆、何が起きているのかを知りたいのだ。
あの時、オリンピック会場付近にいた人間の生存は絶望的だ。
川や海まで使って移動しているのなら、そりゃ東京の一つや二つあっという間に覆ってしまうよな、と妙に納得してしまう。
忌々しい黒い液体は、今後どうなるかは誰も知らない。もしかしたら私の住む県にだって流れ込んでくるかもしれない。
そうしたら、どうしようか。逃げても時間の問題なように思える。
なんとなくだが――あの大魔王は、日本を飲み込もうとしているのではないか? いや、荒唐無稽すぎる、止めよう。
この数日で一気に考え込むことが多くなった。非日常を目の当たりにしてしまったせいだ。
私は手元のスマホに視線を移す。
既読のつかない、友人とのライン。
きっと電源が切れているだけ。
もしかしたら壊れてしまったのかも。
そんなことを思いながら、私は友人からの連絡を待つ。
ずっと待ち続ける。
連日の寝不足がたたったのか、一気に眠気が来た。
少し眠ろう。着信音に気づけるように音量を最大にする。
開けた窓の外、はるか向こうで何か、黒い波が見えたような気がするのは――きっと、眠いからだ。
呑み込まれた夏、泥の匂い。 青柴織部 @aoshiba01
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