最終話 溢れる想い


サムと紅葉は見つめ合い紅葉は想いをぶつける。


「 ねぇ? 何でいきなり姿を消しちゃったの?

モンクンが大怪我したの知ってるよね?

なのに何にもしてくれないの? 」


サムが宇宙人だと知ったので、強めに当たってしまう。 サムしか頼れなかったからだ。


「 …… ごめんね。 色々僕も忙しくて帰らないといけなくなったんだ。 本当にごめん…… 。

脳へのダメージは僕にも治す事は出来ないんだ。

許してくれ…… 。」


「 宇宙人って本当に勝手なんだから!

散々助けてもらって置いて。 」


サムが背中を向けてしまうと、直ぐに紅葉は肩を掴みサムの顔を自分へ向ける。


サムの目から大粒の涙が流れていた。

その姿を見て、問い詰めるのを止めてしまう。

その表情を見れば何も出来なくて辛いのが良く分かった。

その泣き顔は自分と同じだったのだから…… 。


「 すまない…… 。 僕は忙しいからもう帰るよ。

あっ! 一つ良い忘れていたよ。

僕達宇宙人には出来なくて、人間に出来る能力があるんだ。 」


紅葉は少しの希望を感じ、食い入るように聞く。


「 何なの? 教えて。 何でもするから。 」


「 それは傷ついた者が一番愛する人からの口づけにより、どんな深い眠りから覚める能力。

キミになら出来るんじゃないかい? 」


紅葉は深くお辞儀をし、直ぐに走り出す。

サムはニッコリ笑いながら見つめていた。


「 あんた…… サムじゃん! 帰って来たの? 」


海荷がサムを見つけていた。


「 久しぶり。 今日はお見舞いだけなんだ。

ごめんね…… 直ぐに帰らないといけない。 」


悲しそうに語る姿を見て、サムにもどうしようもないのが海荷には良く分かった。


「 …… そうか。 今走って行ったの紅葉だよね?

何話したの? 」


「 ん? それはね…… 。」


サムは先程話した話をした。


紅葉は息を切らしながら病室へ。

その病室は綺麗な青空と光が差し込んでいた。

ゆっくり近付いて行く。


「 モンクン…… 大好きだよ…… 。」


紅葉はゆっくりと口づけを交わした。




モンクは真っ白な世界に居た。

そこには自分しかおらず、他には何もない。

モンクは一人体育座りをしていた。


「 もう疲れたなぁ…… 。 何も思い出せない。

僕は空っぽなんだ…… 。 」


脳へのダメージにより、記憶喪失によりモンクは頭の中で一人寂しく座っていた。


( 良いのかい? こんな所に居て。 )


頭の中に声が響く。


「 良いも何も、何にも思い出せないんだ。

だからもう良いんだ。 …… 何か疲れて動けないんだ。 休みたいんだ…… 。」


モンクは疲れきっていた。


( 疲れた? それは嘘だね。 キミはこんな所で休んでちゃいけないんだ。 )


その声はモンクへ語り続ける。


( キミには聞こえないかい? キミを待ち続ける声が…… 想いが。 )


モンクはゆっくり立ち上がり、周囲に耳を傾ける。


「 モンクっーー! 」

「 モンクくん。 」

「 ボンクラモンクー。 」

「 鈴木君。 」

「 晴坊!! 」

「 晴ちゃーーん! 」


あらゆる所から声が聞こえる。


「 …… いっぱい聞こえる。 何なんだ?

何も思い出せないし、体はボロボロなのに…… 頭の中に想いが溢れて来る…… 。」


モンクは涙が出てきてしまう。


( キミを待ってる人が沢山居るんだ。

いつまで休んでいるんだい? そろそろ目を覚ませ。 早くみんなの所へ帰るんだ。 )


モンクはその声に従おうとする。


「 でもどうやって帰れば良いか分からない。

どうすれば良いのか…… 。」


( 簡単じゃないか? 一番キミへ語り掛ける大きな声に手を伸ばせ。 )


モンクは目をつぶり、周りの声を聞く。


「 モンクーーン! モンクンっ!! 」


誰よりも大きな声で語り掛けていた。

モンクは笑いながら涙が止まらなくなっていた。


「 ぐすっ…… 。 全部思い出した。

僕はこんな所には居られない! 僕の居るべき場所へ帰るんだ。 教えてくれてありがとう。

………… サム。 」


モンクの後ろにはサムが立っていた。


( 早く帰るんだ! …… 僕のたった一人の相棒。 )


モンクは必死に自分を呼ぶ声に手を伸ばす!!




紅葉はゆっくりモンクから離れて様子を見る。

やっぱり目覚めはしない…… 。


「 やっぱりダメだよね…… 。 」


ゆっくり病室を離れようとする。




「 おはよう…… 紅葉ちゃん。 」


紅葉の後ろから声が聞こえる。

直ぐに振り向くと、モンクがベッドから起き上がりこっちを見ている。


「 モ…… モンク……ン。 モンクーーンっ! 」


紅葉は走ってモンクへ駆け寄る。

泣きながら強く抱き締めていた。


「 ごめんね…… 。 心配かけて。

もう大丈夫だよ。 ずっと側に居るよ。 」


二人は静かに抱き合っていた。

互いにどれだけこの時を待ちわびたのだろうか?


その光景を病室の外からサムと海荷が見守っていた。


「 あっはっはは! 本当に最高だよ。 あっはは。」


サムは凄い笑っていた。


「 あんた何でそんなに笑ってンのよ?? 」


海荷が問いただすと。


「 ん?? あの話は僕のついた嘘だよ。

白雪姫って言う童話を見て参考にしたの笑。 」


海荷は呆れて声も出ない。


「 やっぱり人間は僕達には分からない、想いの力は能力なんかには負けない無限のパワーだ。

そんじゃあ、帰ろうっと! 」


「 あんた…… 会ってかないの? 」


サムはゆっくり歩きながら手をふる。


「 また来るから良いんだよ。 相棒にも言っといて。 カレーパン捕ったの謝っといて。 」


そう告げるとゆっくり消えて行ってしまう。

サムらしく子供っぽい、さよならだった。


「 本当に…… ボンクラ共ね…… 。」


海荷は涙が溢れ出ていた。

心配だったから解放されて我慢していた涙が溢れて来たのだ。

ゆっくり病室から離れる。

そこへ白夜が来る。


「 おいっ。 モンクの調子はどうだ? 」


海荷は笑いながら白夜の腕を掴み。


「 今は良いの! どっか旨いモン食わせろよ。

あんたの奢りで。 」


そのまま二人は病院から出ていってしまった。

海荷の最大限の配慮だった。

白夜も満更でも無く、少し笑い歩いて行った。


「 モンクっーー!! 」


凄い勢いで病室の扉を開けて来た。

伴だった。 相変わらず間が悪く勝手な奴。


「 伴君!? いきなりどうしたの? 」


「 お前目を覚ましたのか!? 良かった…… 。

本当に良かった…… 。 うわぁーーん!! 」


毎日お見舞いに来ていたのだ。

目を覚ましていて嬉しくて男泣きする。

病室にはどんどんお見舞いに来た人が、モンクの目覚めにビックリする。


「 モンク君おはよう! 」


委員長だ。


「 おい! ノート取っといてやったよ。 」


妃も来ていた。


「 モンク君!! 目覚めたんだね。 」


キムナリ君だ。


「 晴斗君! 良かったわーーっん!! 」


大泣きする椿先生。


「 晴坊!! 」

「 鈴木君。 新作出来たんだぞ! 早く食べよう。」


パン屋さんとバイトの店長だ。


「 晴斗! いつまで寝てんのよ。 」

「 晴ちゃーーん! 心配したんだから。 」


モンクママと紅葉ママだ。

二人共沢山泣いている。

クラスのみんなも沢山居る。

そこに伴の昔の仲間の翔も遠くから見ていた。


「 死んでねぇのかよ。 つまんねぇな。 」


心配して来たのに顔を出さずに帰る。

本当は心配していたのだ。


病室は人で溢れてしまう。

モンクは嬉しくて嬉しくて涙が止まらない。


「 みんな…… 本当にありがとう。 」


すると、桃が凄いスピードで走って来た。


「 モンク君!! 本当に…… 本当に良かった。

えーーっん!! 」


大好きなモンクが目を覚まし泣いてしまう。

一生懸命作ったケーキを落としてしまっていた。

桃は既にモンクを諦めていた。

紅葉との事を知り、身を引いていたのだ。

でも大好きなモンクの為に、ほとんど毎日お見舞いに来ていた。


「 泣き過ぎだよ。 ありがとう♪ 」


モンクはとっても嬉しかった。


「 よっしゃーーっ!!

モンクを胴上げしようぜ。」


伴がそう言い、病院の中庭でみんなでモンクを胴上げする。


「 わぁーーっしょい!! 」


高くモンクを胴上げする。

モンクは手を大きく広げ喜ぶ。


「 ん? あれは207の鈴木君じゃないか!? 」


ドクターは目を見開き驚く。

ナース達も立ち止まり口を開けている。


「 人間の生命力は私達ドクターにもまだまだ未知数のようだね。 」


ドクターもニッコリ見つめていた。



こんなに沢山の人に愛されているのは能力のお蔭何かではない……。

モンクの相手へ見返りを求めない優しさ。

一生懸命で健気な姿にみんな動かされたのだ。

モンクには能力なんかでは手に入らないモノがそこにはあった。

ずっとずーーっと前から欲しかったモノ。


それは…… かけ替えのない仲間だった。

モンクはもう一人何かではない。

泣き虫モンクでもない!

高く、高く胴上げしてもらいモンクは今までで一番の笑顔で笑っていた。



サムと過ごした365日はモンクにとっても最高な日々だった。

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僕と宇宙人との365日。 ミッシェル @monk3

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