ライバル
「さあ、始まって参りましたぁー! 森林大会ッ!! 司会実況はまたしてもこの私、コルリが務めさせて頂きます!」
会場に流れたアナウンスに緊張が走る。
できる限りの準備をした。ルリリは能力の向上のほか、扱い方についても考えている。控室の窓から舞台を確認して胸を張った。
──準備万端!
対戦カード発表のためステージまで移動する。舞台に揃った実力者は総勢八人。それぞれの名前をコルリが紹介とともに読み上げていく。
「出場選手の紹介を行います! まずは一番手、類まれなる弓術の使い手! 放たれる衝撃は黄色い悲鳴か驚愕か。マディブ出身、期待の星! ショウ選手〜!!」
歓声があがる。ショウは片手を空に掲げ手を振っていた。前回の森林大会ではクローゾの乱入により戦いの行方が有耶無耶になってしまった。ショウは途中で敗北を喫したが、最終的な勝者は誰だったのかすら分からない。
後味の悪い結果に「今度こそ勝つ」と意気込みを入れた。
「続いて二番手は前回ショウ選手と激闘を繰り広げ、ハイネと戦えるまでに成長した戦士! ネフテュス選手〜!!」
湧き上がる歓声。ネフテュスはショウを指差した。
「今度こそ俺が勝つからな。覚悟しとけよショウ!」
ショウへの
「ネス、俺も負けるつもりはないぞ」
「ネスじゃない、ネフテュスだ」
小言で反発するネフテュスだったが一歩下がった。
「さぁてさて! 三人目に行きましょう!!」
場内アナウンスとともに熱気に沸き立つ観客席。選手の紹介にも熱が入る。コルリは一呼吸置くとマイクを片手で握り口元に近づけた。
「三人目は──レーカ選手にリベンジなるか!? しかし今回は参戦していない模様ッ! カステル選手!! 今回も大きな鎌を振り回せ〜!」
初戦でレーカと激突し惜しくも敗れてしまったが、鎌を振り払う際に斬撃を視認できる者は限られている。大振りの攻撃に見えて、実は技巧さが目立つ選手だ。コルリは三人目を紹介し終えると、次へ移る。
「四人目はこれまた同じくカステル選手のライバル! 同じ故郷を持つ二人だがどちらが残るのか〜? アルケス選手! うちわ……じゃなくて扇ですべて薙ぎ払えるのか〜!?」
ショウに勝利した実力者だが能力も強力で扇の先に真空を生み出す。故に空気弾を飛ばした所で真空に吸い込まれるだけである。それだけでなく、気流の流れを作り出すことで戦闘を有利に運ぶ。
そして五人目。誰もが見覚えのある少女。しかし彼女が誰なのかはまるで思い出せない。
「五人目は……おおっとこれは! どこかで見覚えのある髪色ですがその表情は窺い知れません。なぜなら彼女は
流れる銀髪が印象的な少女。仮面の奥で沸々と炎が揺らめいている。
──その正体については誰も知ることはない。
***
「頑張って勝つわ!」
ノーネイムが意気込むと周囲は熱気に包まれる。そんな様子を見てルリリは首を傾げた。やはり声にも聞き覚えがあると。
(レーカ?)
そのように思うも口には出さず。ルリリは自分の番を待つ。
「続きまして六人目! リーチに長けた巨大な剣はどこまで届く!? 力自慢かと思いきや実はディフェンダー! カウンターが得意技との情報が! ロニ選手~!」
少女にしてはやや短めの金髪とくせっ毛が特徴的。姿は小柄だが扱う武器は巨大。ふんすと両手をガッツポーズ。心のギアが一段階上がるに伴って身体中を流れる血液が速くなる。
「七人目の紹介です! これは異例の事態! 緊急参戦、殻人族ではなく殻魔族の登場だ! 過去の戦いから生き延びた赤い髪! ニーオ選手! 嘘を見抜く能力らしいですが、その真偽は正体不明だ〜!!」
長く伸ばした赤髪と紫の瞳、二対四本の上腕。単純計算でも手数は倍となる。甲殻武装の姿形、能力は話したことのあるルリリでさえ知らなかった。隣に並ぶルリリへ声をかける。
「ルリリ」
「なに?」
「私も優勝狙ってみようかしら」
「む……」
ルリリの眉に皺が寄る。顔には笑顔を貼り付けつつも、口元で八重歯が煌めいていた。
「──そして最後は八人目! 光を放つ能力に対して翅の黒星が対照的! 白星獲得なるか〜? 英雄キマリの娘、ルリリ選手!!」
あまりにも大仰な紹介に顔が火照る。ルリリはトクン、トクンと高鳴る鼓動に耳を傾けながら、胸に手を当てた。
「私勝つよ! 見ててね、皆!!」
全員へ向けて言い放つ。宣戦布告だ。
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