再生篇
幕間 美しき終焉
──轟音が鳴り響く。
「はぁ、はぁ……みんな! 目を覚まして!!」
レーカは瓦礫の中、悲鳴をあげた。周りには幾千の折れ曲がった幹や枝。土は焼けたように熱く、ザラザラとしている。辺りを見回せば杭に打ち付けられ、木の壁に激突した──。
「ルリリ! あなたも起きて!!」
ルリリの見るにも無残な姿が瞳に映し出されていた。見たくない光景だが、レーカは吐き気をこらえて周りに助けを呼ぶ。
「お願い、ネフテュス……!」
ネフテュスは折れた枝や瓦礫の下で意識を失っている。うつ伏せの状態で、その表情さえも見ることはできない。
「ねぇ、ロニ……」
ロニは能力の代償なのか、全身血だらけであり、地面に転がる甲殻武装へ必死に手を伸ばしたまま動きが止まっている。
「っ、シロキ……!」
シロキも感覚共有を使ったのか、胸元に大きな切り傷があった。
思わず前を向けば、全ての
それは異形と化した賢者の成れの果て。
本来の昆虫のすがた──外骨格へと戻った、ハイネだった。
「くっ、この……絶対に許さないんだから!」
巨大な斧で切り刻もうと腕を振り下ろすプリモ。しかしハイネは横ステップで全て回避し、そのままプリモの横腹を蹴り飛ばす。
「ふぁ……ぐぅっ!!」
その
「っ、プリモ!」
あわてて駆け寄るが、プリモは僅かに口を動かして何かを伝えた。
「……プリモ、わかったわ。【フォーミュラ・バースト】!!」
レーカなりの方法で血流を加速させる。腕には三重の腕輪模様が並び、血管がドクドクと波打つ。
そして、レーカはハイネとの距離を詰めた。
「やぁぁぁあああああ!!」
手刀による一撃。
しかし攻撃がハイネに届くことはなかった。先にハイネの攻撃が届いていたからだ。ハイネの掌打はレーカの腹部に重たい圧を与え、レーカの口から鮮血が舞う。
「ぐっ、けほっ、がはっ……げぉっ!!」
地面に倒れ込む。
まるで息が止まったかのようだ。腹部の痛みにむせ返る。それとともに吐き出される黄緑色の血液。
やがて立ちあがるも、頭がふらついて視界がぼやける。やがてレーカは気づく。
行動ができない。言葉を紡ぐことができない。
そして、戦う勇気が出ない。
レーカの意志はたやすく打ち砕かれてしまったのだ。
「はははははは、無様だな。名も無き英雄様?」
ハイネが嗤う。
「う────ッ」
レーカの意識はそこでノイズがかかるように、霞んでいった。
ハイネの攻撃はあらゆるものを一瞬にして全滅させ、森という名の楽園をあっという間に終焉という名の地獄につくり変えてしまった。
その一連の流れはあまりにもあっけなく、無駄のない──そんな、美しい終焉だった。
***
「っ……!?」
途端に目を覚ますレーカ。頬のあたりに涙の乾いた痕があり、今まで見ていた景色を思い出すことを身体が拒んでいた。
(ハイネ。貴方は一体、何者なの……?)
疑問が尽きない。
真実を隠すために暗躍していたことはアトラスから耳にしたことがあるレーカだが、実際に表立って動き出した時には仲間を捕食していた。許容し難い行動もそうだが、何よりその一連の活動に一貫性が存在しないのだ。
不安な気持ちがレーカの胸の内を突き刺してくる。
「私は、どうしたら……」
涙がまた、視界を覆う。
レーカは
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