第11話 これは、人なのか……?

「主導者については、妾達も未だ掴みきれてはおらぬ。ただ、騒動を引き起こした組織の名前については判明しておる」


 ナハツェーラがリネットへ目配せをすると、リネットはポケットからスマホを取り出し、1枚の写真を見せてくる。


「これは、人なのか……?」


 殆どブレていて、人相まではわからないが、人間同様に2本の腕と2本の足が付いている事がわかる。ただ、どちらも固そうな皮膚で覆われている感じだ。びきびきにひび割れている感じで、鱗に近い見た目だ。


「恐竜人間。この方たちは、古代の生物であり、絶滅の一途を辿った恐竜の細胞を、なんらかの人工的な処置により、人間の身体に移植したと思われます。そうして、私達のような魔力を与えられた生物とは違った手法で、1万年前から現代にかけて、生き延び続けています」


「恐竜ってあれか? ティラノサウルスとかヴェロキラプトルとかの」


 ナハツェーラは「うむ」と頷く。


「そやつらの組織の名は『ラプター』。そして、妾達のような吸血鬼とは敵対関係にある。妾達は、人間を生き延びさせ、科学技術等の進歩を後世に繋ぐために行動しておる。だが、やつらは逆じゃ。発展した文明をまっさらまでリセットしようとしたのぢゃ。人間は、技術の発展によって堕落しすぎているとかなんとか言うての」


「そんなの、人間が頑張った結果じゃないか。当然の結果だ。生活を豊かにするために研究にいそしむ人だって大勢いる」


「うむ。まあ、どこかで道を間違えたんぢゃろうなぁ……」


 ナハツェーラは、どうしてか、苦虫を噛み潰すかのような面持ちで呟いた。そうして、


「優斗、妾達に協力してはくれぬか」


「……協力?」


「過去、千里眼持ちの源鬼が存命だったころに予言したことは2つ。1つは、1万年前のフリーズレクイエム。そして、もう一つは」


 ナハツェーラは慎重に告げる。


「1万年後に当たる、今、再びフリーズレクイエムが発生する、と」


 リネットも俯きがちにうなずく。


「時期は、今年かもしれませんし、来年かもしれません。千里眼の精度では、そこまでは見通せなかったとのことです」


「さっきも言うたが、こと直近にあるにも関わらず、未だに止める算段すら立ってはおらぬ。今は、猫の手でも借りたいくらいなのぢゃ。吸血鬼の数は、本当に極僅かぢゃ。世界に100もおらんぢゃろう。源鬼が居なくなった今、ラプターに対抗するための吸血鬼を増やすことも困難ぢゃ。だから頼む、優斗。お主の力を妾達に貸してはくれぬか?」


 ナハツェーラは頭を下げて、俺にそう言った。



 

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ぶらっどたいむ! 涼詩路サトル @satoruvamp

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