第62話:競争の歌‥Competition Song
あの晩餐会から3週間、僕は精霊界に居る。
この世界は、とても穏やかだ。
皆がとても優しく、秩序的で精霊達は幸せを感じている。
自然豊か、気持ちの良い空気、僕が住む世界とは全く違う、そんな気がする。
精霊界にあるフルーツはとても美味しいし、何より質が高い。
空腹感に慣れてきた今日この頃、この精霊界での生活を楽しんでいる。
さて‥僕が此処に来た理由、それは僕の体を調べたりするのが目的の筈だった。
だが、この3週間何も検査もしていない‥何故検査がされなかったのか、その理由は‥
「それでは‼リヒター争奪戦を開催する‼」
ワーー
会場は大盛り上がりだ、席は精霊だらけでどれだけ人が居るのか分からない位多い。
そんな事よりも‥僕は今闘技場の景品席に座って居る。
首にリボンを付けられ、『優勝賞品』として此処にいる‥
「審判は、精霊界の大将軍のハル様!」
「実況は、精霊界の姫騎士リザと精霊界の白い魔女ミラの2人でお送りします!」
もう訳が分からない‥どうしてこうなった‥
実況席にいる2人は妙に息の合ったトークをし始めた。
「さて、ミラさん、本日のメインイベント‥リヒター争奪戦ですが、凄い人数の応募でしたね?」
「ええ、リザさん、今回の優勝賞品はそこに座って居る、リヒター君との結婚権ですからね!これは戦争が起きても仕方ありません!彼と契約した者は永遠の幸せを得られると言う噂が流れてましてね?いや~楽しみですね!」
「そうですね、ミラさんのご子女のレイ様もリヒターさんと契約をしていると聞いていますが‥?やはり変わりましたか?」
「ええ、彼女は彼と契約をしています、とても幸せそうですよ~女としてより一層綺麗になりましたからね~これはきっと彼との契約の恩恵でしょう!間違いない!」
一応景品と言う形でこの場に居るが、実はこれは出来レースだ。
主催者である、カガリさんが事前に教えてくれたのだ。
まぁ、結婚権とは言ってるが、結婚が出来るとは言っていない。
今回は事前に行われた選抜で残った選手4名でトーナメントをする、そして優勝者は僕と結婚権が得られる。
しかし、勝つのはベルベットだろうと言うのが彼女の目論見だ。
尚、ベルベットとレイは死ぬ気でそれを阻止すると言っている。
彼女達の言ってた事はこうだ。
「リヒターに近づく者は斬滅する、この世に遺伝子すら残さん‥」
「リヒター君と結婚‥?そんな命知らずには‥徹底的に教え込まないと‥」
殺す気満々だ。
彼女達は上位種だが、全力を尽くす為に毎日鍛錬をしていた。
僕は彼女達2人が1週間の鍛錬しか見ていないから、具体的に何がどう変わったのかは分からない。
その原因は1週間毎に泊まる場所を変える必要が有ったからだ。
あれはパーティーが終わった時の話だ。
「リヒター様、貴方を国賓として精霊界の姫である、私がおもてなし致します」
「残念だが、それは出来ない。リヒターは既に私の家に泊まる事が確約されている」
「あら、リヒター君は最重要人物ですよ?将軍の家程しっかりとしたセキュリティがある私の家に決まっているでしょう?」
3人が僕が泊まる場所で揉め始めたのだ。
あの時はやっと終わると思っていたが、決してそんな事は無く、戦いは続いた。
結果的には、7日毎に泊まる場所を変える事で何とかその場を収めた‥
彼女達との7日間は‥
「では、リザさん!競技形式についてご説明を!」
「えー、今回の大会では、事前に行った選抜に勝ち抜いた4名の選手でトーナメントを行います!では大会参加者の皆様のご紹介となります!」
エントリーナンバー1番:黒い戦乙女、ベルベット選手!
彼女はなんと「精霊界のリーサルウェポン」や「精霊凶器」と呼ばれたあのカガリ様と「ナチュラルボーンマスター」、「閃光魔術師」と呼ばれたガンビット様の一人娘です!
彼女既にリヒター・ウェイン様と契約をしており、今回の争奪戦で確実に結婚したいと言う意気込みを語ってくれました!
あ、あれぇ‥これ出来レースって言ってたよね?趣旨が変わってませんかね‥?
エントリーナンバー2番・純白の悪魔、レイ
精霊界の清楚系と言えばこのお方!実況席に居るミラ様の娘さんです。
独自ルートで入手した情報ですが、彼女は既に人間界に居る一部の人間から熱狂的なファンが居るそうです!何でも彼女は彼らにとって神であり、一種の宗教と化しているそうです‥
そんな彼女ですが、今回「私のリヒター君」にする為に全身全霊を賭して戦いますと言っていました!
エントリーナンバー3番・支配戦姫、アマンダ様
我等精霊界の姫、アマンダ様です!
彼女は全てを持っています、美貌、頭脳、地位、名誉等全てをその手に収めた淑女!
精霊界でもその美貌も有名ですが、魔法でも高い能力を持っているという噂で彼女は「ジ・レイン」、全てを支配する者と呼ばれています!
しかし、彼女が唯一得られなかった物こそが、「リヒター・ウェイン」!
そんな彼女自らが出陣し、自らの力で得られるか!
エントリーナンバー4番‥
リザさんが突然言葉に詰まった。
そして誰かがリザさんに紙を渡し、彼女はそれを読んでいる‥
何事だろうと思い待っていると‥
「えー‥参加予定だった4番目の選手、トーフさんが行方不明となった為‥私が特別参加枠として急遽参戦する事になりました‥」
会場はどよめいた。
リザさんも困惑している‥何故彼女が?と
そこには姫様、アマンダさんがニヤリと笑みを浮かべている。
まさか‥ね?彼女が手を回したなんて‥
ちょっとしたハプニングは遭ったが、取り合えず大会がスタートする事となった。。
‥出来レースって聞いていたけど、本当にそうなのだろうか、僕は不安です。
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