第4話:訪問者の心をへし折る無慈悲な精霊達

母さんと父さんが戻ってくると、父さんの顔が腫れあがっていたが、スルーしておいた。

今僕が考えている事は…彼女達を何処で寝て貰うかだ。

と言うのも…僕の家は…ハッキリ言って大きくない、僕の部屋には一人用のベッドで…どうするべきか…彼女達を床で寝かせたくないし…


「父さん、母さん、相談なんだけど…」

「あら、なぁに?リヒター?」

「この二人を家に居て欲しいんだ、彼女達は僕の精霊だし、助けてくれた恩人なんです、だから…」


母さんはニコニコしながら言った。


「良いと思うわよ~あ、でも『間違い』だけはダメだからね」


レイが爽やかに返答してくれた。


「お義母様、ご安心下さい、光精霊のレイがしっかりと見張りますので…リヒター君を守って見せます」


「レイさんありがとう、息子を頼みますね!」


「おっと、私を忘れて貰ったら困りますよお義母さん、私だって彼を守りますよ、彼を狙う奴は根絶やしにしますよ」


「まぁ、ベルベットさんも!息子は幸せ者ねぇ~」


久々に騒がしい家、一気に2人増えたけど、僕達はその騒がしさが心地よい。

ってか何で僕が守られるのかは分からないけど…


そんな騒がしい中、突然ドアが開いた。

誰だと思い皆がドアを見ると、ウォルスが立っていた。

嫌な気分だ、幸せと感じた瞬間から一気に現実…嫌な場所へと戻された。

何を言い出すのか分からず黙っていると…


「リヒター、何で私に報告しに来ないのよ!」

「え…」

「は?あんたは私の『物』なのよ?当たり前でしょ」


この一言にベルベットがキレる。


「おい…お前散々リヒターを能無し能無しって言ってたよな…どの面下げて此処に来たんだ?」

「だ、誰よ、あんた!」

「私は彼の精霊だ」

「ぷ!!!精霊とか!!!頭大丈夫?能無しは自称精霊を連れてるとか、マジ受ける

わー!頭大丈夫?ねぇ?」


この一言は…聞き捨てならない。


「ウォルス、帰って…」

「…え?」

「僕の事は幾らでも馬鹿にしていい、でも…僕の精霊を馬鹿にするのは許せない」

「い、いや、ちょっと待ってよー冗談なの、冗談、そんなに…」


今までなら僕は耐える事を選んでいた、でも今は違う。

僕を助けてくれた精霊さん達を馬鹿にしたのは許せない。

感情の昂ぶりからか、本音を彼女にぶちまけた。


「ウォルス、いつもいつも君は僕を馬鹿にして、道具の様に扱って、どんなにボロボロになっても君は僕を笑っているだけだった…此処にいる彼女達は僕を助けてくれて、一緒に居るだけで僕は楽しく感じる…あなたと違って。」

「え…」

「ウォルス、幼馴染ごっこは今日で終わり、君の事は大嫌いだ」

「ちょ、ちょっと…」


此処でベルベットとレイは彼女に追いうちをかける。


「と言う事だ、さぁ出て行け。リヒター私の為に怒るとは…嬉しいぞ…あの激しいキスの時の様な男の顔になっていたぞ…」


「え!?キス…」


「ふふ、確かに男の顔でしたね~私はあの優しい寝顔も好きですけどね、大丈夫よ、リヒター君、嫌な思いをもうしなくて良いんだよ?私が癒してあげるよ」


「…」


2人から言われる事が理解出来ないのか、ウォルスの表情は絶望感を感じる。

良く分からないけど、早く帰って欲しい。


「さぁ、リヒター私達と一緒に部屋に行こう、良い夢を…見させてやるぞ」

「ええ、私達がしっかり、癒してあげますね、心も体も」


「いやーー!!!!」


そう言ってウォルスは家から出て行った…

何が嫌なのかは分からないけど…我が家に平和が戻った…筈だった。


「ねぇ…リヒター?激しいキスって何の事?あんた…何したの…?」

「あ…」


この後1時間近く正座で説教を受け、僕の足は痺れて立てない。

解放された僕は、追加で1か月買い出しが罰として増えた。

母さんが家事やりたくないだけじゃ…とか言いたかったが言ったら追加1時間では済まないと思い、黙った。怒る母親にはハイしか言ってはならない。それは父さんから学んだ事だ…


激しく怒られた僕見る、彼女達は申し訳なさそうだ…


「す、すまん…どうしても我慢できずに…」

「ごめんなさい、リヒター君…」

「良いよ、僕を想ってわざと言ったんでしょ?だから気にしないで」


そう言って僕は彼女達に微笑んだ。

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