言葉にならない。読んでそう思った。それでも、余韻だったり、頭に残った文章の肌触りだったりが、この短編を読んだという実感を想起させる。この作品は、一つとして同じ感情になる物語はない。短編集ってこうあるべきなんじゃないかなと思わせる。それだけに、作者の力量だったり、マルチな感性に脱帽する。作者の元を離れ、読者の感性で好きな解釈をしてもいい自由があり、自分だけの物語にできる嬉しさがこの作品にはある。あなたの好きな物語がきっとあると思う。
この短編集を端的に表すならパレットに並べられた多色な色と表せる。並べられた色の色はどれも違う。基本的に小説の書き手が同じだとある程度書き方に癖がついていて同じような雰囲気を感じ取ることがある。この作品の素晴らしいところはそんな作品の癖というものがなく、一つ一つの個性がまた異なっているということにある。1話は早くて2、3分で読めてしまう短編集だ。電車通学などの間に読んでみて欲しい。
長編を含めて、数作品読ませていただいて、この短編集である。同じ人が書いているのか、と驚く。文章の色が違うのだ。ちょっとした短編というので気軽に読んでみたが、凝縮された描写するシーンがズシリとくる。シリアスでもコメディでもない文章の引力。書くごとに色が違う描写、今後もまた違う色の短編が重なっていくのかな。作者による作品というより、作品に作者が寄せていいく印象が強い。おそらくそれがこの作者さんの特徴なのかなという気がする