星の降る夜に

きりたにくるみ

第1話

星空の下で君は何を思うのだろう。君の顔を見ても僕は何もわからない。

星を見たいと言われたから、ついてきたけれど何をするわけでもなかった。

ただ、ふたご座流星群が降り注いでいる。

「流れ星に願いをかけたことがある?」

君は唐突に僕に聞いた。表情を動かさないまま。

そもそも僕は星をそんなに見ない。流れ星を見ようって思ったのも君に誘われたからだ。

僕が何も言わないでいると君は

「別にどっちでもいいんだけど、じゃあ何で流れるか知ってる?」

「……宇宙で何か起こってるから?」

何でだろうか。考えたこともなかった。

「…君は理系だったね。」

「なんか違かったかい?」

真面目に答えてしまったのを少し恥ながら、拗ねてみた。

「文系は違うのだよ。理系君よ。」

「じゃあ何だい?」

君は少し経ってから初めて僕の方を見た。

「死んだ人を迎えに来るためだよ。」

静かにそういった。足元でクリスマスローズが風に揺られていた。

「死んだ人の魂は一人では動けないから、神様や上にいる親類がね、乗るための星を渡してくれるんだよ。」

そうなのか。そう知ってからこの空を見るとなんだか祈りたくなった。

「私がなんで君にあの質問をしたのかというとね、憎かったの。死んでしまって

道半ばで夢や願いを途絶えてしまった人が乗る星にさえ願いをかけるなんて。」

空を見上げてそう君は言った。そうか君は一人の親友が。そうか。

だから君はそんな我慢してるような顔をするのだね。

「私もあの星に、あの星の一部になりたい。」

だから僕を呼んだのか。この柵に囲まれた世界と下界をつなぐ場所に。

「寒いな。でもちょっとセンスがいいよね。」

僕は君に言うよ。僕の気持ち。これで止まるわけないって知ってるけど。

でも覚悟はできたし、我が儘なのも知ってる。

「それなら僕も一緒に行くよ。こんなに降っていたら僕の乗るものもあるんじゃないかな。」

「…なに言ってるの?」

「君を一人にしはしない。暖かく一緒にいよう。僕が君の水先案内さ。」

説得されても屈しないよ。こうと決めたら突っ走るのが僕のいいところで悪い所でもあるんだけど。

君の手を取る。抗うことなく立ち上がる君。空を見上げて星を睨む。

二つの星がまっすぐ降ってくる。

「あれに乗ろう。」

そう僕が囁くと君も笑いながら頷いた。

君は僕が説得されないの知ってるんだね。何にも言わずに手の温もりを感じながら、二つで一つになって、飛び乗った。

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星の降る夜に きりたにくるみ @kiritanikurumi

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