最終話
あれから2年がたった。
レイディエとシュトュルは学校を卒業したらすぐに結婚する予定である。
そして、卒業式を間近に控えていた。
2人の関係は良好だ。
幸せな家庭を築くことを夢見ている。
2人は海に来ていた。
シュトュルは靴と靴下を脱いで、浅瀬に足をつけていた。
レイディエ殿下はそんなシュトュルを穏やかな表情で見ていた。
「シュトュルは海が好きだね」
海を見ていたシュトュルが視線をレイディエ殿下に移す。
「えぇ……。大好きです」
シュトュルはそう言って、海を見る。
まるで誰かを探すように。
先ほど言った『大好き』も、ただ単に海が好き、と言う感じではなく、誰かを思って言っているようだ。
「……シュトュルにとって海は特別なんだね」
レイディエ殿下はそう呟いた。
「レイディエ様」
シュトュルは2人きりの時は、そうやってレイディエ殿下のことを呼ぶようになった。
「何だい?シュトュル」
シュトュルは笑った。
「レイディエ様は、レヴィアタンをご存知ですか?」
「レヴィアタン……もちろん知ってるよ。海を司る神……そして、嫉妬に狂った悪魔」
レイディエ殿下はそう言って、ふとレヴィアタンのおとぎ話を思い出す。
「確か……大事な番を殺された恨みから、恋に悩む乙女達に取り憑いて、幾つもの恋を破綻させた……っていうおとぎ話」
シュトュルはレイディエ殿下の側に来ていた。
「えぇ、そうです。彼女は人間と自分自身を恨んだ……。彼に好きだと告げれなかったから」
まるで内緒話でもするみたいに、シュトュルはレイディエ殿下の耳元にそっと近づく。
「彼女もまた、恋に悩み、苦しんだ1人の乙女だったんですよ」
サファイア色の海は、今日も穏やかだった。
レヴィアタンの恋愛術 天石蓮 @56komatuna
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