第11話  中途採用

やっと以前よりもこなす時間が短く済むようになり(いまだに早めに職場に来てはいるが)、みんなが定時に帰れるくらいの仕事のスピードになった。少し自信もついてきていたある日、中途採用で人が入ってきた。その人は同業から転職してきたようで、仕事のノウハウなどは知っているそうだ。


その人の仕事ぶりをみて、どこの部署に配属するか決めるそうで、持ち場を代わるように言われた。初めてその場から離れた。


その仕事ぶりを見て唖然とした。


丁寧、正確、そして身のこなしが美しい。無駄がない。


同じ時間与えられているのに作業が次々とこなされていく。自分の倍以上のスピードで仕上がっていく。


その様子を見ていた上司も驚いたようで、目を見開いていた。


気づくとそのフロアにいた全社員がその作業を見つめていた。


「いやーこんなに仕事ができるとは・・・。」

「来たばかりなのに、さすがエリートは違いますね。」


周りでは様々な称賛の声が出ていた。


 作業を見入っていると、背後に上司の気配を感じた。

耳元で、「これほどは求めていないが、もう少し早くできるように願うよ。」


一気に自信が喪失した。

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