第7話  酒の肴

季節のものは本当に美味しい。

体が欲していたようでなかなか箸が止まらない。

そして、どれを食べても酒と合う。


一通り味を見た後で、ふと家主の方を見る。


なんだか深妙な顔をしている。


「どうしましたか?苦手なものでもありましたか?」


「あ、いえ、美味しいですよね!あ、そういえば、今日家探さなくて良かったんですか?」


「え?あぁ。はい。まぁ。」


不自然だ。ものすごく不自然だ。

考えてみれば、普通家がないなんで状況に陥った人がする行動ではなかった。居候する気満々の行動だった。我ながらひどい奴だ。


すると家主が口を開いた。

「それなら良かったです。買い物をしようと提案したばかりに、家を探しに行けなかったらどうしようと思っていたんです。」


「大丈夫ですよ。お気遣いありがとうございます。」


どうにかごまかせた。のか?


しかし、なんだか微妙な空気が流れている。


本当のことを言ってしまっても良いのだが、果たして信じてもらえるだろうか。気味悪がられて追い出されてしまうかも知れない。いや、追い出されるくらいならまだ良い。下手したらお巡りさんのお世話になるかもしれない。


ふと家主の方を見てみる。


なんだか様子がおかしい気がする。

約1日一緒にいただけなので、家主の性格やいつもの調子と比べてどうなのか、などはまだよく分からないが、なんだか違う気がする。

少しこちらの様子を伺っているように見える。


「何か、気になりますか?」


「・・・今年の桜、咲いている期間が長いですよね?」


ん?


「桜、ですか。」


確か買い物に行く途中の公園あたりでそんな話をした気がする。


「長い、ですよね?」


家主は首を横に振る。


「今年の桜は例年と比べて遅咲きだったんです。ニュースで話題になっていたはずです。」


そうだったのか。何気なく応答してしまっていた。


「スマホで連絡取らなかったのもそうですし、アップルウォッチのこともご存知なかった。そして桜・・・。アップルウォッチはニュースなど見る週間がないとか、テレビがないからとか色々理由はありますが、桜はこの辺が家だというのならばご存知のはず。」


「最近引っ越して来たばかりで・・・」


「ウソです。最初に会った時に長く住んでいたとおっしゃってました。」


そんなことを言った気がする。


・・・


言い訳が思いつかない。


「本当は、どこから来られたんですか?」


・・・


長い沈黙が訪れた。


・・・


意を決した。仮に自分が逆の立場だったら、こんなに得体の知れないヤツをしばらく家にあげるのはやはりいい気はしない。ここにいさせてもらう以上、自身の状況は伝えておいた方がいいだろう。


息を深く吸って、細く出す。


「信じてもらえないかもしれませんが、5年後の未来から来ました。多分。」


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