第7話

 10歳の誕生日から半年。

 相変わらず俺の日常は灰色だ。何をするでもなくぼうっとするだけ。貴族としての務めなど何もなく唯々時間を浪費するだけ。

 一応帝国貴族ウィート・ルドルとしての行動はこなしている。貴族同士の交流会を兼ねたお茶会などは定期的に組まれている。10歳を迎えた子息としてはそれに参加しなければならない。

 行動を起こしたくない俺としては参加しないことも考えた。けれど参加を拒否するという正しい歴史、正史と異なる行動をするという事も選択できなかった。どんな行動をとっても影響が出るのであれば少なくとも正史と同じにしておこうと心が逃避を行った。

 帝国貴族としての行動は反吐が出るが難しくなかった。記憶に残るウィート・ルドルとしての振る舞いを模倣するだけ。あとは勝手に周囲が盛り上げてくれる。深く考えなければどうという事はない。

 そんな交流会を除けば俺の日常は何ら変わらない。

 正史のウィート・ルドルは金に糸目を付けず色々なモノを取り寄せては遊び惚けていた。浪費こそ帝国貴族という思い込みもあるので無駄に賑やかしていた。

 けれど今の俺には特に興味がないので引き籠るだけ。

 引き籠るというのはあまり外聞が良くないのだがそれについてはフミ・カードゥが役に立った。

 ウィート・ルドル初の専属使用人。万人受けするような美しさではないが容姿は整っている。常に侍らせて日がな一日ともに部屋に籠っているとなれば色々と噂が立つ。

 曰く、ウィート・ルドルはフミ・カードゥに入れこんでいる、と。

 血統を重んじると標榜するルドル家だが純潔ではない。寧ろ父も祖父も盛大に遊び倒している。遊び倒している父と祖父に小言を言う母も祖母もそれなりに遊んでいる。

 帝国貴族は対外的な事実内部の真実には大きな乖離がある。

 勿論それは貴族間では周知の事実。どこの帝国貴族も同じようなモノなので問題視されない。

 寧ろその真実を知りすり寄ってくるモノは多い。才能に乏しい下級貴族はその血統を取り入れるために、あるいはその権威の甘い汁をすするために近寄ってくる。

 そういった歴史があるため俺の日常に妨害が入ることは無かった。

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