Legend of....

山本友樹

第1話 夢と光

クィンシィの魔の手を逃れ、「私」は次元の間を彷徨っていた。


まがまがしい色合いをしたそこはとても神聖な場所とは思えなかった。


だが、今の私が逃げ出すにはそれしかなかった。


敵も必死だった。私が脱走した途端に追撃を開始した。次元の間に入り込めるところまでは順調だった。


だが、入った瞬間に敵はその次元の間へと侵入してきた。


1体目の撃破には何とか成功したものの、余裕は無かった。


出口は無いものか。どこかに糸口はないものか。手探りだった。逃げ、生き延びることに必死だった。


そんな中でも7つの目を持つマキュビリティの追撃が追いついた。高さは私と同じくらいの8メメロス。といってもこの次元の間に入れるギリギリのサイズと言ったところだろうか。


私は腕から衝撃波を放ち、何とか応戦する。


それを相手はひらりと回避し、反撃に移る。


胸の部分から放たれたエネルギー光球は私の右腕に直撃した。


激しく火花を上げた腕と共に私も悲鳴を挙げる。


そんな中、一つの丸い球を見つけた。


その中には緑色も不均一に混じっている。


新たな次元の先の物であることは確認できた。そこがどんな場所かは分からないが今はここを何とか乗り切るしかなかった。


マキュビリティはまたもエネルギー光球を放つ。


次は同じ手を食わぬように私も右腕から衝撃波を放ち、エネルギー光球に当てる。


相殺。


二つのエネルギーはスパークを起こし、熱い火花を散らす。


その瞬間、大爆発を起こす。


その隙を狙うしかなかった。


私はその青い星に身を投げた。


青い星は氷の粒が私に突き刺さる。そのまま粒子となり、氷の粒と同化していく。


だが奴らは迫ってくる。この星を巻き込んで・・・・・・。






俺は逃げていた。何も考えずに、森の中を必死に逃げていた。


自分の後ろを振り返ると「怪物」がいた。


その怪物は腹に口があり、皮膚の色はゴーヤのような有機的な緑でとっき突起があり、口は4つに開かれていた。身長は周りの木々と合わせて見ても10メートル位はあるだろう。


「だ、誰か!誰か助けてくれ!」


俺の声は届かなかった。人が通らないこの山道では。


俺の首に何かが絡まった。ぐい、と引っ張られる。


体が湿った地面にこすられていくのが分かる。何本かの木に衝突したりもした。


その引っ張るものは怪物の細く伸びた腕、触手のようなものだった。


「た・・・たすけ・・・」


首を絡まれ俺は声を出せなかった。


怪物は口をいっぱいに開き、触手を自分の方へ引きよながら男を食わんとしていた。


その時だった。


怪物に1つの流星が降り注いだ。


バァン!と大きな音を立てた「それ」は瞬く間に怪物は蒸発させた。


俺が振り返って見てみると、男の10倍はある人型の巨人がいた。その姿は巨人としか言い表せられなかったのだ。全身のカラーは青。だがその青も部分部分で銀色と絡み合ったカラーをしていた。そして胸に相当するであろう部分には赤い十字のマークが刻まれていた。手には剣を持ち、怪物の肉塊のようなもの怪物が剣の先にまとわりついていた。顔こそは見えなかったものの、俺には救世主、まるで女神かなにかに思えた。




































5年の月日が経った。


ネットの掲示板等でとある噂が上がっていた。


「怪物がこの世界に存在しているという。その怪物は人を襲うも何者かによって存在を抹消されているとも。その怪物は近くの山に生息しているとも。」


くだらない、そんなものある筈ない、子供の戯言だと。大体の人間はそんなことを言ってはぐらかした。


が、俺、大久保隆はそうは思わなかった。


5年前に俺が体験した怪物に襲われ、と青く大きな剣を持った巨人に救出された件。


記者である俺はこれを公表しようかとも考えたが、そうはしなかった。なぜかというと、新米ペーペーである上におそらくこれを公表しても誰にも信用されないというのと、上に言っても聞いてもらえないと思ったからだ。


それと同時に俺はすごく壮大な夢を見ていたように思えたのだ。遥かなときの夢を。


そして今はそんな5年前の事を考える間も無かった。


今の俺の仕事はいち記者として今の現場、地元の室内のあるスタジアム中学剣道会の剣道大会地区予選をリポートすることであった。


「つまんねぇなぁ~」


2階から見える剣道の試合を見ながらそんなことも俺は言ったりしていた。が、仕事だ。実際に記事にする際にはものすごく興味をそそるように書かなければならないのだ。


決勝も終わり、残りは表彰式になった。


表彰式を間近で取材しようと思い、階段を下がっていき、渡り廊下に差し掛かったとき、ドンっ!何かにぶつかった。


「いててて・・・・・・。」


少し痛がっていると目の前には剣道着を着た少年がいた。少年はどうやら無事だったようで、倒れ込んでしまった俺を上から心配そうに見つめていた。


「す、すいません!」


少年は深々とこちらを謝った。


「いいよ。俺も前見てなかったしな。」


少年の手を借りながら俺はたちがった。


「じゃ、僕はこれで・・・・・・・。」


そそくさと後にしようとする少年。


そのまま俺も少年と反対方向へ向かおうとした時だった。


俺の目の前が真っ白になった。


真っ白になっても意識はしっかりとある。倒れ込むだとか体調不良の類ではない。


俺はふと振りかえっていた。そこには先ほどの少年の後ろ姿のシルエットがくっきりと存在していた。まるでこの空間には少年と俺しかいないようだった。


そして少年の背中からゆらゆらとうごめくオーラのようなものが見えた。


そのオーラは何かに形づけられていく。


そのオーラからは信じられない「もの」になった。


「巨人・・・・・・・。」


俺はふとそんな言葉を言っていた。そうだ。目の前に見えたそのオーラは5年前に見た巨人そのものだったのだ。


ハッと気づくと辺りは渡り廊下に変わっていた。先ほどの光景はまるで俺にしか起きていなかったかのように周りはこれまで同様のスタジアム内の渡り廊下でしかなかったのだ。


少年は過ぎ去ろうとしていた。


俺はその場から離れようとしていた少年を呼び止め、


「君は巨人、怪物なんてものが実際に存在していると思うかい?」


俺はふと気づくとそんな質問をしていた。普通に思えば意味不明な質問だ。まるで5歳児位のヒーロー好きの少年にするような質問だ。


「すまない、変な事を聞いたかもしれんな。」


俺はそう言い残し、俺はその場を立ち去ろうとした。が、少年は俺に意外な回答をした。




「そうですね。でも僕はそれらがあっても誰も気づかないものになってるんじゃないかと思います。」


少年は俺にそう返してきたのだ。
































大会も閉会式を迎え、生徒たちが片付けを行い始めていた。


隆は先にその場を離れ、自身が所属している新聞社に戻ろうとして車に乗った。


「いい記事ならありますよ。安心して待っててくださいよ。」


上司に電話にて報告して隆は車を走らせた。


俺は山道を通っていた。近道なのだ。辺りには木々しかなく、コンビニも何キロ先にあるかな?という具合だった。


そして5年前、俺が怪物と遭遇した場所でもあった。


「まだあの怪物は居るのか・・・?」


俺はあんな体験をしていながらもまたあの巨人に会えるのではないか。とか思っていたのだ。そして何よりも真実が知りたかった。


俺は少しだけ寄り道しようと思い、車を近くのスペースに止めて、森へと進んでいった。


手に持っているカメラは常に人差し指はシャッターを切る準備をしていた。


が、そんな気構えが役に立つ事は無かった。


やはり森林は森林であり、緑が広がるだけであった。


俺は怪物が現れなかったのを残念と思うのと同じく、現れねくてよかった。という安心感を抱いていた。


あきらめがつき、車の方へ戻ろうとした瞬間だった。


10メートルほど先にあの時の、剣道の大会のところでぶつかった少年がいた。


少年は自分に背を向けてるようになっており、正面は見えなかったが、その剣道着に見間違えは無かった。


「そこの君!」


俺は少年に声をかけた。


少年は振り返り、え?と言いたげな驚きの顔を浮かべていた。


「こんなところで何をしているんだ?」


少年に近寄って行くと


「来るな!」


鬼気迫る声で少年は叫んだ。


だが俺はそれを気にする事はなかった。


ずんずん近づいていくうちに気づいた。


少年の前には1つの異形の化け物がいたのだ。


そう、あの時、5年前に見たような怪物が少年の目の前におり、俺自身もまた足が震えていた。


「だから!言ったのに!」


少年は独りごちた。


怪物はグァァ!と大声を放ちながら口から火を吐いた。


その火を吐いた方向はデタラメだったが、火が当たった場所は爆音を上げ、燃え上がっていた。


俺はただただ震えていた。これは一体何が起こっているのか。俺に全てを理解出来る時間は無かった。


「くっ!仕方ない!」


少年は胸のポケットから何かを取り出した。


「うおおおおおおおお!」


少年はそれを大空にかざす。


瞬間、少年は青い光に包まれた。


その光は段々膨らむように大きくなり、ある形に変えた。


それは隆が5年前に見た青い巨人の姿そのものだった。

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