第2話 気候(1) 気候って?

 さて、では本日からいよいよ本格的な解説に入っていこうと思う。


 「よろしくおねがいしまーす。」

 「それで、まずは何から始めるんですか?」


 ふむ。地理は歴史や数学と違って、慣用的に何から始めるといったものがないんだ。なので、私も何から取り扱うべきか悩んだのだが…、まずは気候の分野から取り扱おうと思う。


 「うへぇ…。気候ですか…。」

 「いきなりつまらなさそうですね…。」


 世間の代弁をどうもありがとう。

 学校の地理の授業(主に中学)では、やれ気候区分だの雨温図だのを覚えさせられ、その結果気候に苦手意識を持ち、ついには地理をつまらないと感じてしまう子供が大量生産されている。


 「僕もそのひとりです!」

 

 そう、自信満々に答えられても困るのだが…。

 確かに気候区分を学ぶことも重要であることは否定しない。

 けれど、気候を学ぶ上で最も大切なのは、気候区分ではなく、そもそもなぜ気候に差が生じるのかを理解することだ。 


 「気候差ですかー。正直よく分からないですね笑。」

 

 それくらいでちょうどいい。なに、一から解説していくから安心したまえ。


 さて、気候差について考える前に、君はそもそも気候とは何か知っているか?


 「それくらい分かりますよ!」

 「簡単に言うとお天気のことですよね!」


 君の考えているそれはおそらく気象のことだ。


 「え?」

 「気候も気象もだいたいおんなじようなもんじゃないんですか?」


 何を言ってる。は明確に区別するべき分野だ(お互いに関係が無いわけではない)。

 

 さて、では早速、気候と気象について説明したいのだが、その前にまず天気や天候といった言葉の違いから見ていくことにする。


 「そういえば天気って言葉も、天候って言葉も使いますねー。」

 「この二つにも違いがあるんですか?」


 勿論だ。この二つも明確に区別されているものだ。まずだが、これは短時間における空の状態を表す言葉だ。


 「短時間って具体的にはどれくらいなんですか?」


 一般的には数時間から数日とされている。

 加えて、その期間が一週間から一か月になるとそれはと呼ばれることが多い。


 「なるほど~。」

 「つまり、天気と天候の差は期間の長さってことですね!」


 そういうことだ。

 そして、についてだが、これは、ある地点における一年を周期として繰り返される大気の状態のことを差す。


 「やっと気候が出てきましたね!」

 「でもちょっと説明が分かりにくいって言うか…、難しいような…。」


 そうか。ではもう少し噛み砕いて説明しよう。

 君は東京のおよその年降水量、つまり一年にだいたいどれくらい雨が降っているか知っているか?


 「いえ。全く。」


 まぁ、これを知っているのは地理を学んでいる人くらいなものだから知らなくて当然だ。それで、結論から言うと約1500mmだ。これは気候を学んでいく上で非常に役に立つ数字なので出来れば覚えていただきたい。

 それで、この1500mmという数字だが、これはそうそう変わるものではない。


 「と言うと?」


 例えば、"今年の夏は雨が少なかった"とか"今年の冬は雪の日が多かった"など、季節ごとに降水に差が生じることは珍しくない。けれど、一年を通じて降水量を見てみると大体毎年1500mm前後になっているのだ。


 「へー。なんだがすごいですね!」


 よって、毎年東京では約1500mmの雨が降る気候と言うことができる。これが一年を周期とする大気状態ということだ。


 「うーん。なんとなく分かったような分かんないような…。」


 まぁ、気候についてはこの先長々と扱っていく予定なので、解説を聞いていくうちになんとなく分かってくると思うのであまり気にするな。とにかく今日は気候と気象は区別するものであるということを分かって貰えればいい。


 「そうでした!」

 「肝心の気候と気象の違いについてまだ聞いてませんでした!」


 ふむ。では次は気象についてだ。とは大気中で起こっている現象をまとめた総称だ。そこにスケールの大きさや場所についてはあまり考えない。要約すると刻々と変化する大気の現象と考えてくれればいい。

 例えば、気温とか湿度とか雨とか風とかそんなところだ。そして、これら気象に関する様々な要素が集まって天気というものを形成する。


 「なるほど~」

 「ってことは、気象が集まって天気になって、考えるの期間が長くなるにつれて、天候、気候って変わっていくってことですね!」


 そうそう。こうして見ると気候と気象は全然違うものだろう?

 これは学問的な区別だが、気象学は主に地学や物理学の分野なんかで取り扱うものだ。なにせ、現象を解明するものだからね。

 それに対し、気候学を扱うのは地理学だ。先ほども述べたように、気候とは、ある地点における大気の平均状態のことなのだが、ここで、重要になってくるのはこのという部分だ。気候というものは当然ながら地域によって全くことなる様相を呈する。


 「その理由をこれから考えていくんですね!」


 そうだ。地域差を考えるのは地理学の最も重要な役割だからね。


 というわけで、今回は気候とは何か?というテーマで解説をしてみたがいかがだっただろうか?

 まだ、解説には不馴れなゆえ、拙い部分も多々あっただろうがご寛容願いたい。

 

 次回は気候を考える上で最も重要といっても過言ではない大気の循環について解説する予定だ。ここまで読んでいただいた読者の皆様に心からの感謝を。

 


 

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地理学って何してるんですか? 天月紅葉 @kuchan036

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