地理学って何してるんですか?

天月紅葉

第1話 はじめに

 というわけで行き当たりばったりで始まったこの企画だが、まずは自己紹介から始めよう。

 私の名前は一ケ谷有栖。地理学を専攻しているピチピチの大学2年生だ。黒髪ロングの美少女という設定になっている。


 「自分で言いますかそれ?笑」


 この「」(かぎかっこ)がついているのが私の後輩くんだ。


 「どうも、はじめまして。」


 もっと何か言うことはないのか君は。


 「だって僕、作者に名前すら考えて貰えなかったんですよ!?」


 これは小説ではないから名前なぞどうでもよかろう。

 

 「それにしたって名前くらい付けてくれたっていいじゃないですか!」


 名前が思い付かなかったんだ。察しろ。


 「え?、じゃあ僕なんでここに呼ばれたんですか?」


 君には相づち係をやってもらう。


 「相づち?」


 そうだ。この解説を読んで下さっている読者の方が抱くであろう疑問とか感想とかを指摘してくれればいい。


 「はぁ…」


 …もう少しやる気を出したまえ。



 さて、前置きはここまでにして、そろそろ本題に入ろうと思うのだが、その前に君の地理に対するイメージを聞かせてくれないか?


 「んーー。イメージですか…」


 「なんか国の名前覚えたり、統計を覚えたりそんな感じですかね。」


 やはりそうか…。

 まぁ世間の地理のイメージもそんなところだろう。テレビのクイズ番組を見ていても、地理の問題と言えば、統計だの、国の名前だの、雑学をひけらかすようなものばかりだ。


 「でも実際そうなんですよね?」


 否定出来ない部分もあるが、地理学の本質はそれとは全く違う。


 「それじゃあ地理ってなんなんですか?」


 まぁ、そう慌てるな。


 地理とは何だ?という質問に答えるのは以外と難しい。なぜなら、地理学が取り扱うモノは守備範囲が広すぎるのだ。


 「と言うと?」


 地理は言ってしまえば、ヒトが関わるものであれば何でもありの学問なんだ。言語、都市、宗教、農業、さらには自然現象も研究対象になる。


 つまり、あえて一言で地理を表現しようとするなら、

 地球上のあらゆる現象の理(ことわり)を読み解く学問だ。


 「あらゆる現象ってちょっと言いすぎじゃないですか?」


 実際そうなんだから仕方ない。

 君は、"地理学と哲学は諸科学の母"という言葉を知っているか?


 「いえ。初耳ですけど。」


 これはつまり、あらゆる学問は地理学と哲学にさかのぼる、ということだ。

 その証拠に、地理学という言葉の前に他の学問をくっつければそれは地理学として成り立ってしまう。

 言語地理学、歴史地理学、経済地理学…といった具合だ。

 言ってしまえば地理学はあらゆる学問の頂点に位置すると言っていい。


 「そんな他の学問を勉強してる人に喧嘩売るようなこと言わないで下さいよ。」


 これくらい言わなきゃ今の世間の地理へのイメージは払拭できまい。

 地理学に興味がない人は、地理は陰キャ科目だと思っているかもしれないがそれは違う。

 地理学は他の学問に負けず劣らず、崇高で美しく、楽しい学問なんだ。 


 「なんかもう怪しい勧誘みたいになってますね笑」


 君も本当の地理の世界を知れば、少しは地理の楽しさを分かって貰えると思うよ。


 「だといいんですけど。」


 「ところで、地理って学んで役に立つんですか?」


 いい質問だね。私も知り合いに同じことをよく聞かれるよ。

 早速回答するが、地理を学ぶ意義はおおいにあると言っていい。

 地理を学んで身につくものはいろいろあるが、最も重要なのは、地理学的思考だ。


 「すみません。よくわからないんですが…」


 もう少し具体的に説明しよう。

 君は友達に自分の家の場所を伝えたいとする。さて、どうする?


 「そうですね…。LINEで自分の家の位置情報を送りますかね。」


 位置情報とはもう少し具体的には?


 「Googleマップで自分の家の場所をマークしたりとか?」


 それが地理学的思考だ。


 「へ?」


 君は位置情報を伝える方法として、地図を使って示す、というやり方を取った。文字だけで伝えることも出来るのに。


 「そりゃ、文字より地図の方が分かりやすいじゃないですか。」


 そうだ。地図を使った方が分かりやすい。

 

 これが地理学的思考だ。


 文字情報だけでは何が何だか分かりにくいことも、地図上に表すだけで途端に理解できるという場面が沢山あるんだ。我々はその恩恵を日々気づかないうちに受けている。言い換えれば、我々は無意識に地理学的思考に触れているんだ。まずはそのことに気づいてほしい。


 「ちょっと、地理の見方が変わってきたかもしれません!」


 それは良かった。


 他にも地理を学んで身につくことは沢山あるが、それは追々話すとしよう。


 さて、話が長くなったが、次回からいよいよ本格的に解説を始めようと思うのだが、その前に、私の解説の基本スタンスをお伝えしておこうと思う。


 本文では、専門用語などのよく分からない単語も説明の都合上多く登場すると思う。勿論、それらはひとつひとつ解説していくつもりだが、あまり深く考えないでほしい。

 地理学とは本来、暗記をするのではなく、事象の理由を解明しようとする学問だ。それゆえ、地理学を理解するために、専門用語を知ることは重要ではない。むしろ、論理の流れ、なぜそうなるのかを知ることにエネルギーを使ってほしい。

 といった具合だ。

 

 導入が長くなってしまい大変申し訳ない。

 私の解説を聞いて、少しでも地理に興味を持っていただけたら、この上ない喜びである。

 

 では、解説を始めることにする。


 地理の世界へようこそ!!



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