目隠し花火
雨世界
1 私は今日、……あなたに告白をすることにした。
目隠し花火
プロローグ
……ねえ、どこにいるの?
本編
私は今日、……あなたに告白をすることにした。
真っ暗な夜の中を、私は無我夢中で走り続けていた。
やがて、空からは雨が降ってきた。
冷たい雨。
……だけど、まだそれほど強い雨じゃない。
私は夜の中を走り続けた。
遠くに見える明るいお祭りの光に向かって。街の中を一人で走り続けていた。
そこにあなたがいる。
あなたのところにまで、私は全力で走っていく。
あなたに会うために。
……あなたに、私の思いを、きちんと言葉にして、伝えるために。
だから、お願い。
まっていて。
私はちゃんと、そこに行くから。あなたのいるところまで、ちゃんとたどり着いてみせるから。
だからお願い。
お願いだから、……私を、……私のことを……。
どーん、と花火が夜空に上がった。
その瞬間、まるで一瞬だけ、本当に時間が止まったような気がした。
花火大会の夜
夜空には、とても綺麗な花火が咲いた。
大きな、大きな、黄色い花火。
その光が、周囲にある夜の暗闇を一瞬だけ明るく照らし出した。土手の上に立って、その綺麗な花火を見ている私とあなたの姿も、一瞬だけ、その光に照らされて、姿がよく見えるようになった。
その一瞬の光の中で、あなたは、私を見て、「綺麗だね、花火」と言ってにっこりと笑ったような気がした。
でも、私の目には、あなたの顔が、あんまりよく見えなかった。
あなたは紺色の浴衣を着ていた。手には赤い金魚の描かれたうちわを持っている。
私は黒色の浴衣を着ていた。
黒色の浴衣の上に、黄色い帯を巻いていた。
私はその手に金魚すくいであなたが救った二匹の赤い金魚と透明な水の入ったビニールの袋を持っていた。(私が自分で、持ちたい、とあなたにねだったのだった)
お祭りの夜は、明るかった。
屋台もたくさん出ていて、人も本当にたくさんいた。
……でも、その明るい夜の中でも、私はあなたの顔が、実はあんまりよく見えていなかった。
どうしてなのか、わからないけど、私には、どうしてもあなたの顔が、見えなかった。
あなたはまるで、顔のない人間のようだった。
目隠し花火 雨世界 @amesekai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。目隠し花火の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます