第98話 作文の学習
作文の学習と言えば、原稿用紙に一字ずつ書き込んでいく印象がある。自分の子ども時代を思い返す限り、鉛筆と消しゴムと原稿用紙が、作文の時間の全てだった。消しては書きの作業が辛かった記憶がある。
大人になって、ずいぶん便利になった。二十代のころ、ワードプロセッサつまりワープロが登場した。「書院」だの「文豪」だの、いろんな機種を比べた覚えがある。その後、ワープロはパソコンに取って代わられた。
パソコンのワープロソフトといえば、今の若い人は「Word」。一方、五十代の人間には「一太郎」の方がなじみがある。どちらも一長一短あって、最初に習い覚えたソフトを使い続ける人も、少なくない。
パソコンのワープロソフトは、確かに便利だ。思いついたところから文章を打ち込み、後で自由に編集できる。手書きと比べ格段に速い。大学の卒業論文も、昔は手書きだったが今ではパソコンで作成している。
しかし、便利なことに頼り過ぎるのも考えものだ。「ひとたち」と入力して「人たち」とならず、「人達」と誤表記で変換するのは「Word」。漢字や語句の知識がないまま使うと文章の体裁をなさなくなる。
人は、原稿用紙に一字ずつ書き込む中で文字や言葉を覚えてきた。下書きにパソコンを使うのはいい。だが、「清書」のときだけは原稿用紙に向かう場が必要なのではないか。文字は、指が覚えている。
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