第64話 若い人たち

 「最近の若い者は……」というフレーズは、いつの世でも言い古されてきた。あの枕草子にも、若い女房たちが使う言葉を嘆く作者の嘆きが見られる。世代が違うと、何かと行き違いが起きるものらしい。

 夜遅くまで、街中でたむろしたり、バイクの音高く走り回ったりするのは、まだ分かりやすい。見た目が真面目そうな若者の中にも、自転車を運転しながらアイスを食べ、包み紙を投げ捨てていたりする。

 歩きスマホは、いつでも、どこでもし放題である。そんな人たちを見かけたら、こちらが道を譲らないと危ない思いをする。こうした新しい「常識」を身に付けなければならないご時世になってきた。

 もっとも、古い世代が常に正しいかというと、そうでもない。先ほどのスマホも、世代を問わず運転中のドライバーが使っている。ら抜き言葉「食べれる」を使い始めた世代は、もう若者とは呼べなくなってきた。

 自分が慣れ親しんできていないものと出会うとき、それを取り込んでいけるのが「若さ」なのかもしれない。取り込めないことを正当化するために、取り込むことのできた者まで否定してしまう。

 かつて「現代っ子」と呼ばれた世代も、もはや還暦直前。全てを理解できなくても、受け入れられなくてもいい。認めるべきは一部でも認める姿勢をもつだけで、過ごしやすくなるのではなかろうか。

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