第61話 言語
ヒトは言葉を使って考える。言葉の性質によって、ヒトの考え方や感じ方も変わってくる。国民性は、その国の言語によって決まる
のかもしれない。日本語で考えるヒトは、髪や瞳が黒くなくても「日本人」となる。
動物の鳴き声は擬音語で表せる。擬音語は、どの国の言葉にもあるようだ。だが静まりかえった様子を「シーン」と表す擬態語は、日本語くらいのものらしい。日本以外では、熱帯の島国に一ヶ所あるくらいだったか。
虫の声を楽しむのも日本の心。虫の声を雑音と捉える欧米人には、理解できないと聞いた。ほとんどの国が英語の語順なのに対して、日本語と韓国語だけは、意思を文末で決めている。論理より情緒が優先しがちだ。
情緒が優先すると、子どもの名付け方も感覚的になる。「男」と書いて「あだむ」、「黄熊」で、くまの「プー」さんと聞くと、古い世代は頭が痛くなる。暴走族は「夜露死苦」なんて書き方もしていた。
お役所が「障害」を「障がい」と書き換えるのも同じ発想。「害」に差別的な発想があると言うなら、「差し障り」の「障」も同じではないか。言動ではなく表記のみを変えるのでは、意味がない。
情緒を重んじる日本語は、身分の隔てなく詠んだ和歌を集め「万葉集」を作った。美しい言葉は「言霊」となった。その心が行動になり、成果となるためには、日本語はまだまだ変わる必要がありそうだ。
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