第59話 出産
初孫ができて、妙に出産の話を聞くようになった。ほとんどが、二〇代半ばの女性だ。一番上の子どもの学年は、同級生どうしの結婚が多く、同窓会のときに話題になるらしい。中には三人目や四人目という話も聞く。
市のホームページを見ると、高齢化が進み総人口も減っている。だが〇~五歳児の人口だけは下げ止まり感がある。地元の人間としては嬉しいが、なぜそうなったのかが気になる。偶然は、ありえない。
どこで産んだのか聴くと、病院が同じだった。先月から分娩を辞めて、県立病院にアドバイザーとして通っているらしい。不妊治療で有名だそうだ。安心して産める所があれば、安心して妊娠できる。
二〇年ほど前、酒の席で町作りについて語り合ったことがある。県立病院に不妊治療の専門家を呼ぶ話だ。専門家の医師を頼って人が集まる。治療や検査に機械を使えばメンテのスタッフも常駐する。
出産できたら三年は市内に住むよう勧め、増えすぎた空き家の家賃のみ無料にして貸与。未満児対象の保育士の雇用を増やし、その税収で家賃を賄う。五年計画で子育ての町を宣伝し、移住者を募る。
この政策が進められる市長を探していたら、似たような考えを個人で実現した医師がいたことになる。口先だけの自分を恥じ入る他ない。何事によらず、何かができる人、何かしようとしている人にはかなわない。
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