第53話 スマホ

 ガラケーからスマホに替え、ガラケーに戻して再びスマホにした。スマホの扱いは、未だに苦手である。機能が分からないわけではない。取り扱い説明書を読み込んでなお「相性」が悪いのだ。

 困っているのは、キー操作。液晶画面に表示されたキーに触れても、ほとんど反応しない。タッチした指に、「タッチキー」が反応しないのだ。軽々と扱う若者を横に見ながら、オジサンはますます不機嫌になる。

 年を取って、指先から潤いがなくなったのだろうか。先日は、ATMの画面上のキーに触れても反応しなかった。軽く触れるだけで操作できるはずのタッチキーは、乾いたオジサンの「タッチ」には見向きもしない。

 本体を薄型にして軽量化するために、タッチキーはなくてはならない。軽く触れるだけという手軽さもいいのだろう。スマートフォンの「スマート」という名は、こうしたところからきているのかもしれない。

 だが、「スマート」な「タッチキー」に見放された世代の人間には、「スマート」は「薄っぺら」にしか見えない。コンビニで売っているスマホ対応の手袋やタッチペンを見るたび、情けない思いをしてきた。

 この星の道具は、便利さを求めて進化してきた。タッチキーで「スマート」になったはずの「ケータイ」が真に「進化」するのはいつだろう。使い古された指先を、手軽にリニューアルすることはできない。

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