第34話 日向夏

 生まれ育った場所によって、いろいろな風習があり、いろいろな考え方が生まれる。方言にも、その地方ならではの考え方が表れている。でも、隣近所と違うというのは、何だか不思議だ。

 九州の男性は「九州男児」と呼ばれ、逞しく頼りがいがあるとされてきた。熊本の「ひごもっこす」や鹿児島の「さつまはやと」は有名だ。でも、間に挟まれた宮崎は「いもがらぼくと」つまり「芋がらでできた木刀」。

 芋がらは、中身がスカスカですぐ折れる。すぐ折れる木刀なんて、何の役にも立たない。熊本や鹿児島と違い、宮崎の男性は「役立たず」と見なされているのだ。何だか可哀想になってくる。

 この宮崎県に、日向夏というフルーツがある。二〇〇年ほど前、偶然発見された宮崎の原産種だ。宮崎大学医学部は、日向夏ミカンの抽出物に骨粗しょう症を防ぐ働きがあることを突き止め、特許を得た。

 地元のJAと協力して、日向夏のジュースもできている。でも宣伝が足りないのか、地元であまり知られていない。二〇一八年五月より、大学附属病院の入院患者向け一般食として採用されたのみだ。

 「いもがらぼくと」には、今こそ日向夏が必要。日向夏で骨太の人生をゲットするときではないか。だが日向灘に面した温暖な宮崎には、日向ぼっこがよく似合う。あえて変わることはないのかもしれない。

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