第32話 書く
掌に、指で名前を書くように言われて、どの指を使うだろうか。ほとんどが人差し指、ごく一部が中指だろうと思う。わしづかみでペンを持ち親指を下向きにして書く人を見たことはあるが、例外中の例外だ。
単に図形ではなく、筆順とともに認識するのが文字。文字の学習に、手書きは欠かせない。ではなぜ、人差し指なのか。この答を教えてくれたのは、ある大学教授だった。掌に、指で名前を書くよう指示した人である。
皮膚の感覚点つまり、圧点・痛点・温点・冷点の密度が特に高いのは、人差し指。敏感な人差し指が、筆順とともに文字を認識するのに一番向いている。筆記具の持ち方で「二本掛け」の人が、中指を使うというわけ。
赤ん坊は、言葉を耳で聞き、口で話しながら覚える。その言葉を文字の形で書いて、文字を読むことでヒトは賢くなってきた。ヒトの賢さは、指が支えている。手書きを捨てたヒトは、賢さを失うのだ。
パソコンやスマホの普及は、文字を書くものから打つものに変えた。一方で、手書きを担う文房具は「可愛い」を売りにしながら若い女性の購買欲をくすぐっている。ヒトの賢さは、どこを目指しているのだろう。
商売の世界に、機械が入り込んで久しい。だが売り場には、手書きのポップが溢れている。機械を扱うのは、結局はヒトの手だ。パソコンに漢字を入力する際、手書き入力もある。ヒトが手書きから離れることは、ない。
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