第18話 異能
小学生のころ、遠足のたびに雨が降った。中学生で遠足を休んだとき、いい天気だった。周りは薄々感じていたようだったが、何も言わなかった。特別に何かしていたわけではない。妙に縁があっただけのことだ。
高校で腰を痛め、四十過ぎて膝がダメになった。中長距離を走っていたが、ロードレースは禁止になった。さらに、安全運転を心がけていたのが仇になって、何度か追突されると、ムチウチに悩まされるようになった。
首・腰・膝に故障があると、気圧の変化に敏感になる。雨の三十分前の鈍い痛みは、今では体の一部になった。腰はずいぶん良くなったが、半月板のひびとムチウチは、雨や台風の接近を知らせてくれるようになった。
他の人に分からないことが分かるのは、幸せなようでいて面倒くさい。他の人にできないことができるのも、同じかもしれない。体のメンテナンスのため接骨院にかけるお金も、馬鹿にならない。何より痛い。
スーパーヒーローの特殊能力も、似たようなものではないか。超人ハルクの寝相が悪ければ、寝室どころか家ごと壊しかねない。飛行能力や瞬間移動能力を寝ぼけて使えば、自分の命にかかわる。これでは安心できない。
他と異なる能力は、自分自身で完全に管理できないうちは危険だ。能ある鷹は爪を隠すというが、それは謙遜からではない。使いどころを間違うと、取り返しのつかない結果を招くからだ。異能は、呪いにも似ている。
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