第9話 幽霊

 何か感じたり考えたりすると、それは信号の形で神経細胞を伝わる。神経細胞の出力側と入力側の間に発達した接触構造がシナプス。化学シナプスと電気シナプスがあって、私たちの身体中に張り巡らされている。

 神経細胞の電気信号が、伝達物質の形で次の神経細胞に伝わる化学シナプス。複雑な精神活動を生み出すシナプスらしい。電気信号が直接伝わるのが電気シナプス。素早い反応ができるのは、このシナプスのおかげだ。

 どちらの繋がり方であれ、情報が電気信号で伝わることに違いはない。私たちの感情や思考は、電気信号だということになる。この電気信号の内容が、私たちの個性の違いを生み出すともいえそうだ。

 スマホでのやり取りも、電気信号。無線のやり取りだから、電気信号は空中を行き来している。落雷のことを考えると、電気信号は空中にとどまることも可能だ。もちろん、電気すなわち電子の動きは目に見えない。

 電気信号が幽霊そのものだというわけではない。だが電気信号の比喩は、幽霊の説明に便利だ。電子・陽子・中性子の他、さらに微細な素粒子もあると聞く。エネルギー不変の法則は、永遠の魂を連想させてはいないか。

 神経細胞を伝わる電気信号は、落雷に比べたら微々たるもの。もし幽霊が電気信号なら、落雷の情報量は何人分になるのか。それはもはや神の領域だろう。「かみなり様」とは、よく言ったものだ。

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