第8話 妖(あやかし)

 天使・悪魔・幽霊を除く超自然的な存在を総称して、妖精と言うらしい。妖精事典なる本もあって、日本の神話に出てくる神様も、妖精の仲間として紹介されているという。気になって一冊買ってみた。

 一口に妖精と言っても、さまざまだ。ディズニーのアニメに出てくる可愛らしい妖精もいれば、薄汚れただけのオッサンもいる。日本人の感覚なら、妖怪と呼びたくもなる。まさに「あやかし」そのもの。

 村の作物の実りや疫病の排除など、守り神の役目を担う妖精もいた。村人が教会へ行き、妖精への供物を忘れると村は荒れる。古老の助言で昔のように妖精を祀っても、すでに妖精はいない。日本の昔ばなしのようだ。

 自然現象への畏れを「神格化」するのは、どの国でも同じようなものらしい。信じる者が多くなれば、「神の意思」はヒトの力で実現する。実現した事実が積み重なれば、その土地の「神」は実在することになる。

 妖怪だろうと妖精だろうと八百万の神だろうと、ヒトの思いの強さに変わりはない。思いの強さを託す相手が、信仰の対象と呼ばれるのだろう。神社へのお詣りは、古来神への決意表明だった。神頼みなどではない。

 妖精事典に八百万の神はいなかった。だが、日本昔ばなしでの氏神さまやあやかしなら、似たようなのがいた。その昔、役小角は金剛蔵王大権現を祈り出した。今の私たちは、何を祈り出せるのだろう。

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