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ある日の昼食時、
私のクラスでは一人の女の子のお弁当が無くなる騒ぎも起きて居たのだけれど、最悪お弁当は私の物を上げれば良い。そう思って手の空いていた同僚にクラスを頼んでから、私は
彼を探しに図書室の前を通ると、部屋の中から小さな声が聞こえた。
少しだけドアを開けて、中の様子を見てみる。図書室の照明は消えていたけれど、閉じたカーテンが陽射しを受けて真っ白く輝いていて、おぼろげな光が壁際に並んだ本の臭いを際立たせている。
カーテンの下に
「こんな所にいたの? もうお昼だよ」
私が声を掛けると彼は身体を揺らして驚いた。
「誰と話していたの?」
「『ともだち』と」
「……どこにいるの?」
「もう元の場所に戻ちゃった」
不思議に思って「元の場所?」と尋ねても彼は答えない。肩から下げたバッグを抱え、彼は静かに私を見上げていた。
「もうお昼だから、ご飯にしましょうね」
私は屈んで、彼の手を取った。
「藍ちゃんのお弁当はバスの中にあるよ……一番後ろの座るトコの下に」
私も立ち上がって、彼と歩き出そうとしたとき
「何でわかるの?」
「教えてもらったから」
「誰から?」
座席の間を歩くと、探していた物はすぐに見つかった。一番後ろの座席の下に葵ちゃんのお弁当箱があった。
私はそれを持って小走りで車庫を後にしながら不思議に思っていた。
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