しましま

5.

私たちは山を降りながら、いろんな話をした。旅行はいいもんだな、とか、東京に帰ったら部屋の模様替えをしよう、とか、今度お互いの実家に久しぶりに帰ろう、とか。今、世界はどんどん変わり続けて、いろいろなものがオンラインで、何でもかんでも家にいればできるようになってしまった。私たちが通っていた実態のある小学校は閉校して、オンラインに学校が開校した。教育委員会が配信する動画を家で見る。すべての家庭が同じレベルの教育を受けられるように、とかなんとかそう言う理由も述べられていたのを聞いた。それに加えてオンラインで塾の授業も受けるらしい。確かに費用対効果はいいのかなと思うけれど、なんだか寂しいなと思うのは私がもうおばさんだからだろうか。昔を懐かしむのもいいけれど、今についていくことも必要で、それに精一杯になってきた。時々はアナログな楽しみ方も必要なんじゃないだろうか、とも思うんだけど。

「帰ってきたー。」

杏は、海が見えると、私の手をパッと離して走り出してしまった。杏は行動的で、私はどちらかと言えば引きこもり体質。杏は外に働きに出ているけど、私は在宅勤務。そう言う正反対な感じが補い合って、私たちはうまくいっているのかなと思う。オンライン婚とか、リモート同棲とか、リモート家族とか、そう言う人との温もりを感じなくなった今、リアルに一緒に住めているのはいいことだなあ、としみじみしていると、「理香子ー」と笑顔で手を振る杏が目に入って、すごく幸せな気分になったので、大盤振る舞いで走って追いかけることにした。変な写真のせいでめんどくさいなと思ってたけど、来てよかったな。

なんだかいい気分だ！