コーヒーフロート、氷山の一角

長月瓦礫

コーヒーフロート、氷山の一角


「別れよう」


一言、そう切り出された。


お互いに頼んだ飲み物を飲んで、時間を潰していた。

どちらが先に言い出すか、観察しあっていた。


コーヒーフロートを頼んだけれど、気がつけばグラスは空っぽだった。

残されたバニラアイスだけがじわじわと溶けていく。


ごめんも何度も聞き飽きた。何度もいい逃した。

そのたびに、仲直りした。

完全に修復はできていなかった。


とびきりクールなレモネード。

小柄で可愛いソルティドッグ。

ひときわポップなオレンジジュース。

オレ様気取りのアレキサンダー。


心のヒビに染み渡り、新しい関係を作っていった。

いつしか二人の思いも離れていた。


きっと、お互いに消耗して、疲れ切っていたんだ。

気がついたころには、もう手遅れだった。


「分かった。いいよ」


自然とそんな言葉が出た。

四角い氷山の上に浮かんだバニラアイスが取り残された。


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コーヒーフロート、氷山の一角 長月瓦礫 @debrisbottle00

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