【エッセイ】お題:冷たい円周率 必須要素:車

 数学者になるような人間は、どのような人間なのだろうと想像することがある。


 僕みたいな文系の人間には、数学のどこに魅力があるのかわからない。


 僕にとっての数学を車に例えるなら、パチンコに行った帰りに交通事故を起こして、独房の中で10年過ごす感じだろう。

 そこにはパズドラもモンストもウマ娘もない。本棚にあるのは数学の問題集しかない。そうなれば、僕は10年間の歳月を数学とともに過ごさなくてはならない。


 数学者はある日、女神様に「あなたが落としたのは温かい円周率ですか? それとも冷たい円周率ですか?」と尋ねられたのかもしれない。


 我々のような凡人は「いいえ、私が落としたのは普通の円周率です」と答える。

 そして、円周や円の面積を求める程度の円周率を手に入れる。


 いずれにせよ「私はどちらも落としていません」と答えるのが凡人だ。

 そして、円周率の冷たさとは無縁の一生をすごす。


 もしどちらかの円周率を選べば、あなたは神様のメモ帳の1ページを見ることができるだろう。


 そして、その1ページはあなたの頭の表紙に刻まれるだろう。

 頭の中のページを開こうとするたび、あなたはそのページを見ることになる。

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【短編集】即興小説トレーニング しき @shiki_968

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