2人の利害が一致して期間限定の恋人を演じるも本物の愛が目覚める婚姻譚

叔父で有名な放浪画家と共に異国を巡る創作旅行に同行したいが為に、父親が爵位と領土を家督するに嫡子が女子のみの為、隣領地の令息でヒロインの幼馴染にヒロインと夫婦となり婿養子と画策していた事に反発。またとある伯爵令息は、過去いた婚約者の窃盗癖や伯爵夫人となる自意識の振る舞いに辟易し婚約解消した苦い経験に女性不信に陥るも、外貌や爵位に憧れ秋波や釣書の多さにうんざりしていたので、彼の友の勧めで、ヒロインと恋人を演じれば、ヒロインは婚約発表の延期が謀られ、彼は近付く女性が無くなるという利害が一致し、王都にいる期間を限定した恋人ごっこを興じる事となる。女性不信から女性に触れる事も触れられる事も是としない彼が、偶然躓き抱き留めたヒロインに触れても嫌悪感が無かった事も彼女なら恋人ごっこが可能と判断した要因ではあるが、そんな2人に恋人ごっこの期間終了に至り、お互いに恋慕を抱く展開と、そこまでの厄災が2人の絆を強めていく経緯に感動です。その後愛故に2人を妨げる爵位差や伯爵夫人たなるに不相応から、彼との接触を避けるヒロインと、彼女との事を諦めきれず、只、己の見識と性格で交流関係が深い彼女と、爵位があっても仕事に実績が無い自分とでは、彼女に相応しく無いと父親の叱責と自覚から、彼女に会いたくても会いに行けない彼のジレンマがあまりに切なく堪えました。
そして何より、お互い恋愛がズブの素人同士で周囲に恋人ごっこがバレる事に一生懸命な偽恋人と、ヒロインの知識で絵画の贋作、偽りの名画を見破るという、偽者(物)をめぐる対比の妙に天晴です。
先生の作品ニ作品目ですが、本当に素敵です。

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