第1話 プロローグ2
匂いが好き。足音が好き。
名前なんてよくわからないけれど、呼ばれて振り向くと目が合うから好き。
とっても安心できるから、いつでもあなたの傍らにいたい。
だからどこにも行かないで。ずっと側にいてね。そう思っていたのに。
ホント、何が起こるかわからない。ごめんね、勝手に外に飛び出して。
茂みに同じくらいの子を見つけたから、ちょっとお話しようとしただけなのに。それだけだったのに、不意に聞こえた大きな音と、大きな影にすくんじゃったの。
あの時はよくわからなかったけれど、今思うとあれ、車だったんだね。
うん、先生が言っていること、よくわかる。右みて左みて、もう一度右みて。だからもう二度と道路になんて飛び出さないよ。他の子にだっていつも注意しているの。ホントだよ。
でもあの時は失敗しちゃった。
それでもね、とっても嬉しかったんだ。迎えに来てくれたんだって、嬉しかったの。気がついた時にはまた匂いがしたんだもん。
もう声も出なかったけど、目も見えなかったけど、あなたの匂いと温もりだけはわかったから。
尻尾を振って返事したの。
泣かないでって、ゆらゆらと。
悲しまないでって、ゆらゆらと。
伝わったかな。伝わっていたらいいな。
あなたに合えて心から幸せだったの。本当だよ。
まるで夢の中のよう。あの時だってじゅうぶん幸せだったけど。
もう一度あなたに出会えて、夢の続きを見る事ができて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます