第2話
7月23日木曜日の夜、つくば市内で不審車を追跡中のパトカーがロケット弾で爆破されるという事件が発生。
同じ頃、研究学園都市にある郡司製薬の研究センターでは、新薬開発担当技師2名が惨殺された上、開発中だったコロナワクチンのデータも破壊されていた。つくば署は目撃証言などを受け、破壊工作のプロとして公安からマークされている殺し屋・源田吾郎を両事件の容疑者として指名手配。
一方、センター襲撃に伴うライバル企業の株価高騰で莫大な利益を得た残間丈一郎という派遣会社社長の情報を入手した、つくば署の逗子刑事と膳場刑事は、残間の部下である雑司ヶ谷大輔を連行して揺さぶりをかけるが、逆に源田は派遣社員の横田蘭子を拉致し、雑司ヶ谷との身柄交換を要求してきた。今までになく危険な犯人につくば署全体が翻弄される中、その捜査方針を巡って逗子と膳場の間に亀裂が生じ始める。
7月24日
源田は桃香、そしてトミーを殺したときのことを思い出していた。人を殺すのはなんて心地良いんだ。
茅ヶ崎
蒲生義一は人付き合いが苦手だった。義一は夏休みを叔母の家で過ごすことにしたが、観光客が殺到する時期でもあったため、町に自分の居場所を見つけるのに難儀する羽目になった。そんなある日、義一は郡司と名乗る青年と出会った。郡司は不良として有名で、観光客にマリファナを売って生計を立てていた。
派遣ではなく正社員になることを望んでいた義一だったが、遊び心を抑えることができず、郡司と一緒にマリファナを売ることにした。
そして、若葉ってクラブの客と親密な関係になるに至った。ガールフレンドができて有頂天になる義一だったが、これが災難をもたらす原因になるとは予想していなかった。しかも、折悪しく、源田が茅ヶ崎に接近していた。
7月25日 つくば
それまで一人暮らしをしていた長男、塁が龍造寺家に戻り、父親と母親と塁での3人の生活が始まる。その直後から塁による激しい家庭内暴力が有り、父親と母親はおびえて暮らすようになっていたという。
コロナのせいもあり、塁は外出せずオンラインゲーム等をして引きこもり状態の生活をしていたが、8月1日、お神輿の声がうるさいと腹を立て父親と口論になったという。この数日前の7月28日に、座間市通り魔事件が起きており、父親は「息子も周りに危害を加えるかもしれないと」不安に思い、刃物で塁を殺害した。塁は数十箇所を刺されており、初公判でも「強固な殺意に基づく危険な犯行」とされた。
8月2日
蒲生が源田に殺されてしまった。若葉はクラブ『スコーピオン』に潜入していた。
茅ヶ崎での仕事を終えた若葉は、快速アクティーに乗った。コロナの影響もあり、車内は空いていた。
車両には若葉の他、様々な職業の乗客が乗り合わせていた。その中の1人、残間が若葉を見知り、話しかけてきた。
彼は脅迫状を受け取っており、身の危険を感じて若葉に護衛を依頼したのだった。しかし、若葉は残間の態度に良い印象を持たず、事件そのものにも興味を示さなかったため、彼の依頼を断ってしまう。
列車は茅ヶ崎と藤沢の間で『犬が線路に入った』って理由で立ち往生する。
トイレの中で残間の死体が発見される。死体には刃物による12箇所の刺し傷があった。現場には燃えさしの手紙があり、「八坂のことを忘れ」という文章が読みとれた。
調査の結果、残間はつくば市で起きた八坂雄一殺害犯であることが判明する。その事件では第1容疑者である妻の八坂玲子が焼身自殺、さらに自首した龍造寺塁は証拠不十分で釈放されたあと、父親によって殺されていた。
事件の顛末を知っていた若葉は残間の正体に気づき、捜査を始める。若葉は車掌の浜村涼介と、乗り合わせた医師の知念あずさと共に事情聴取を行う。
犯人は犬のせいで立ち往生している列車から逃げられないはずだが、乗客たちのアリバイは互いに補完されており、誰も容疑者に該当しない。
困惑しながらも若葉は真相を導き出し、乗客たちに2つの解答を提示する。1つは、何らかの理由で残間と対立していたギャング等の人物が途中の駅で列車に乗り込んで残間を殺し、すでに列車から降りたというもの。列車がすでに違う標準時に入っていることを残間や乗客たちが忘れていたとすれば、乗客たちの証言との辻褄は合うが、それはあり得ないと反論する知念たちに対し、若葉はもう一つの解答を話そうとしたとき、喉を押さえて苦しみ出した。
逗子は銃声の響き渡るバーを思い出していた。トカレフってヤクザが使う銃を源田はぶっ放し、蒲生は頭を撃たれて死んだ。
「助けてくれよ!俺は死にたかないよ!」
雑司ヶ谷が泣き喚いてる。
「偽装請負した罰だよ」
膳場が吐き捨てた。逗子、膳場は2人とも九州男児だ。
「俺を馬鹿にしてると、大変なことになるよ?」
雑司ヶ谷がワケの分からないことを口走った。次の瞬間、逗子と膳場は金縛りのような感覚を覚えた。
湘南・つくば連続殺人事件 鷹山トシキ @1982
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