第3話 298
鮠部はつくばの旅館で水風呂に入りさっぱりした。鰻でも食べたいな?今晩は『愛はあなたを救う』だ。鮠部のもとに、モジャモジャ頭、アロハシャツ姿の男がやってきた。彼は錯乱しており、数字の298を書くばかりである。
そして、鮠部と麻友が少し外出したすきに、アロハは行方不明になった。
そして、0時10分頃につくば山中でマネキンのようなものが2体捨てられているのを鮠部は発見し通報、駆けつけた捜査員が、道路から約10メートル下の雑木林で、アロハの遺体を発見する。同日午後9時頃、被害者の身元が鯛沢理だと判明する。
「タイザワ、あいつ整形したのか」
冷やっこをツマミにビールを飲みながら、鮠部はニュースを見ていた。鯛沢は鮠部が捜査のイロハを教えた奴だ。豚みたいに太っており、伊集院光みたかったが、今は太田光みたかった。
捜査本部は事件発生から5日後には、『青龍荘』に泊まる、鮠部のもとを訪問し、事件当日のアリバイなどを事情聴取している。
つくば署の鱧村は鮠部を重要参考人として取り調べた。コロナで次々に捜査員が脱落、BMXの選手で脚力のある鱧村は特任捜査員として抜擢された。
ポリグラフ検査を実施したほか、毛髪と指紋の任意提出を受けた。鯛沢殺害に関して、犯人と久間のDNA型がほぼ一致するという鑑定結果が出たものの逮捕には至らなかった。
だが、3日後に鯛沢の衣服についていた繊維片が鮠部所有の車のシートのものと一致したとして、鱧村は死体遺棄容疑で鮠部を逮捕した。
30年前
21歳の横沢は、今年も両親と共に北軽井沢の別荘で一夏を過ごしている。横沢の父は、東京の名門大学で教鞭をとる考古学の教授、母は何ヶ国語も流暢に話す英語の先生だ。アカデミックな環境に育った横沢は、他の同年代の子供に比べて、文学や古典に親しみ、翻訳(英語、イタリア語、フランス語を流暢に話す)や、音楽の編曲を趣味にする(ピアノとギターを弾く)など、成熟した知性豊かな青年に成長した。さらに、柔道にも秀でていた。
来年は大学4年生、論文は何を書くべきか?
毎年、鯰田章介教授は、夕凪大学の学生を1人、アシスタントとして別荘に招待する。今年やってきたのは、課程論文を執筆中の鮪麗美だった。横沢は、自信と知性に満ちた麗美を、はじめは嫌厭するものの、徐々に彼に対し抑えることのできない感情に駆られていく。
盆踊りに出かけ、金魚すくいをやった。彼女はやたらうまかった。🐠
熱帯魚をGETして麗美はメチャクチャ嬉しそうだった。
ひどいスコールの夜、横沢はラジカセでチューリップの『虹とスニーカーの頃』を聴いていた。テープがもう擦り切れそうで、財津和夫の声が変だ。
部屋のドアがノックされた。
開けると、麗美が立っていた。彼女は瞳が潤んでいた。
「どしたの?」
「教授におかされそうになった」
横沢は怒りに駆られた。鯰田は無防備にも部屋の鍵を開けたままだった。鼾をかく、彼の腹に包丁を突き刺した。噴水みたいに血がブシューッ!と噴き出し、鯰田は痙攣して、やがてピクリとも動かなくなった。
何日か前に鯰田は夕食のとき、『マグロはイヤだな』と言った。刺し身なんか出してないのに。麗美は料理がうまかった。教授ともなると舌が肥えるのかな?だが、今ハッキリと分かった。アレは不感症を意味するマグロであることに。
目を開けると、そこにはシミだらけの天井があった。夢の中にモンスターとなった鯰田が現れた。下水道に捨てられたペットのナマズが、研究所から投棄された成長ホルモン実験用のラットの死体を食べて体長10m以上に成長、人間を襲い始めた。
人間の肉を大量に食ったことで人間に変身。死んだ鯰田によく似ていた。
鯰田は魔法を使え、地震が襲来した街を横沢は逃げていた。
肉、肉屋……298!
横沢は鯛沢の残したダイイングメッセージは『つくば』かと思っていたが、肉屋って可能性もなくもない。
横沢はヒグラシの鳴く、不気味な林の近くにある肉屋にやって来た。🍖🍗、様々な肉が並んでいた。
「いらっしゃい」
車椅子の男が出迎えた。
「あんたアジウミさんだよな?」
どんな字だったかは忘れたが、彼が犯人で間違いない。全身の筋肉がピクピク動いてる。真犯人に近づいたときの発作だ。
「鯛沢は潜入捜査する為に整形していた。彼は私にこう言った。『もともと、使えなかったですよね?歩けなくなってよかったんじゃないですか?』」
駆けつけた捜査員に鯵海は逮捕された。
デンジャーフィッシュ 鷹山トシキ @1982
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