僕の野球物語

総督琉

僕の野球物語

僕の野球人生は、ここで終わるのだろうか?



僕の名前は神氏かみし おう。野球は幼い頃からやっていて、ピッチャーとバッターはどちらもできる。


投げられる変化球は10通り。中にはオリジナルの変化球もある。


そして球速は子供にして146キロ。これは今年のプロの球速の平均と同じだ。


だがここは田舎。どれだけ頑張ってもスカウトは来ない。


そして今日は卒業式。いよいよ高校の野球部に入ってスカウトに見てもらう。それでプロを目指すんだ。


だから僕は練習を欠かさなかった。


そして皇高校に入学した。


「サッカー部募集中です」


「バスケ上手い人ウチに来て」


「薬学部に入りませんか?」


このすめらぎ高校には多くの部活が存在する。だがしかしほとんどの部活が弱小で、大会は全て予選落ち。


だがこの僕が野球部に入るんだ。予選落ちだけは確実に無い。


僕は野球部の部室の前に来た。だが不思議なことに、野球部の勧誘は見なかった。


きっと忙しいのだろう。その時まではそう思っていた。だがしかし、野球部を見れば一目瞭然だった。


「あのー。野球部に入りたいんですけど…」


僕は野球部の部室のドアをゆっくりと開けた。だが部員は誰もいなかった。


まさかまさか…


「君」


後ろから先生に話し掛けられた。


「はい。何ですか?」


「実は野球部なんだが、部員が少ないので廃部になったよ」


「は…廃部!?」


これで僕の野球人生も終わってしまった。僕は少しの間部室を眺めた後、部室を去ろうとした。だが背後から誰かに話し掛けられた。


「よー。俺は野球部部長。といっても廃部になったんだけどね…」


部長は悲しい顔で言ってきた。


「だけどな、次の大会で記録を残せば野球部は廃部にならなくて済む。とは言っても今の今まで優勝したことなんてないけどな…」


「じゃあまだ廃部じゃないんですね!」


「ああ。そうだけど」


「じゃあ早速練習に参加させてください」


「ああ。いいけど…」


そうして僕は野球部に入り、他のメンバーとともに野球の練習をした。


まずは千本ノック。


僕は飛んでくる球を全然キャッチ出来なかった。だって僕はこの練習はしたことなかったからだ。


「よし。次は打球練習だ」


僕は3年の先輩が投げた球を軽々と遠くまで飛ばした。


野球部の皆は状況を理解できていないみたいだ。みんな混乱している。


「お…おい。これなら…優勝できるんじゃないか?」


部長は喜んでいるように見えた。


「なあ神氏。お前、まぐれじゃないよな?」


「もちろん。それに投球もできるぜ」


僕は落ちていた球を拾って、たった一本だけあった木に目掛けて投げた。すると木にピッタリと当たった。


「す…すげー!」


「こ…コーチ~」


部長はコーチと驚いたように話している。きっと僕のことを話しているのだろう。


そしてコーチが僕に近づいてきてこう言った。


「背番号1番だ」


「よっしゃーーー」


そして甲子園前日という日にコーチが家に招待してくれた。


「さあ。座りたまえ」


僕は初めてのソファーに座った。座り心地はすごく最高。初めての感触に感激。


「では本題に入る。実はウチには娘がいてね、娘も野球が大好きなんだ。だけどウチは弱小。娘は他の高校ばかり応援してる。だからこの高校を優勝させてくれ。お願いだ」


コーチが僕に頭を下げてきた。きっとこれが父の責任ってやつだろう。だから僕は期待に応えたいと思った。


「分かりました。僕がこの野球部を引っ張って、優勝させてやりますよ」


するとコーチの娘らしき人が現れた。高校1年生らしい。


「初めまして。私は神國かみくに 月夜つくよ。別にあんたの高校には期待していないから」


「ツンデレ?」


「そんな訳ないでしょ」


月夜は照れながら怒っている。普通にかわいい。


そして予選当日。


「気合い入れて行くぞ」


部長の掛け声に皆の声がこだまする。


僕たち皇高校が先攻。そして一番バッターは僕だ。


僕には特殊能力がある。特殊といっても経験で身につけた物だ。その能力は飛んできた球の球種、球速、重さなどを瞬時に把握する。その能力の名は…


「内角上のストレート。球速は90キロ。余裕だな」


その能力の名は"精密観察スーパーサーチ"


僕が球を撃つと打球は大きく空を舞い、球場の外に行くほどのホームラン。


「1点ゲット」


次のバッターは神毛かみけ うどん。


僕の能力の精密観察スーパーサーチで観察した人の潜在能力を知れる。そしてあいつは変化球への対応が上手い。


彼の能力アビリティは"変化球無効トリックブレイカー"。


だから彼にはどんな球でも強く打てと言ってある。そうすれば彼の体は無意識にボールを打つだろう。


そして彼はカーブの球をライト方面に打った。


次は神由比かみゆい てん。彼女の能力アビリティは"天駆打球ペガサス"。打った球が空中で曲がる。いわば打つ魔球。


守備は打つ魔球を捕れず、球を落とす。今は一塁二塁。


次は神子かみこ ちん。彼の能力アビリティ超剛打インパクト。彼は力だけはある。だから当てる練習をメインでやった。


ボールはライトの後ろに大きく飛んだ。そして今の内に神毛が塁から戻ってきて一点。


これで2ー0


潜在能力を引き出すだけで人はこれだけ変われる。


そして次は相手の攻撃。投手はもちろん僕。


僕の球は146キロ。普通の高校生が打てるはずない。


そして10ー0でコールド勝ちして終わった。そしていくつもの試合を勝ち進め、甲子園決勝戦まで進んだ。


「さあ。ここまで来たからには優勝するぞ。行くぞ。すめらぎ


「おーー」


僕たちの最後の試合が始まった。


だがそのまえに僕はスカウトされた。他の高校に転校できるらしい。僕はそこでさらに力を付けて、プロで活躍する。


僕たちは後攻。なので僕は投手だ。


「さあてと。圧倒的敗北を味あわせて、強い高校に入るとするか」


僕はオリジナルの変化球。クラスターという変化球を投げた。


クラスターは下に一直線にいくように見せかけ、上に急カーブする。だから初見じゃ確実に打てな…


僕の投げた球は、場外までいく特大ホームランとなり一点を失った。


「う…嘘だろ!?」


まだ一回表の一人目だぞ。さらに僕の球はオリジナルの変化球だ。


「まあいい」


次のバッターが現れた。僕は146キロの豪速球を投げた。さすがにこれは、打てな…


ボールは空を切り、ライト方向に飛んだ。そしてバッターは二塁で止まった。


「さあて。おいお前。俺は魔藤まとう きょう。お前らが優勝することなど、ありえない」


「そうかい。僕たちじゃ無理、か。やってみねーと分かんないだろ」


僕の能力アビリティの一つ。"高速思考ハイスペック"は緊急時に思考を回転させ、危機を打開する能力だ。


「僕は神氏 王。お前じゃ僕の球は、打てない」


僕はとっさに思いついた変化球を投げようか迷った。だが僕は投げるしかないと思った。


僕は豪速球を投げた。すると魔藤はボールをバットに当てた。だが、球は縦向きで回転しながらバットに当たったので、バットの周りを回転した。


「これが僕の必殺技。ベビードラゴン」


「そうか。面白いな。だが次は打つぞ」


僕はこの回を全てベビードラゴンというオリジナルの変化球で抑えた。


次は一回裏。僕らの攻撃だ。


投手は魔藤 凶だ。やってやるか。初回ホームラン。


魔藤は豪速球を投げた。


"精密観察スーパーサーチ"発動


「135キロ。そしてストレートか。高校生で135キロはスゴいな。だが…」


僕は特大のホームランを打った。


「よーし。次行くぞ。頑張れよ、神毛」


神毛は変化球をきれいにレフトに飛ばした。そして一塁へ。


次は神由比。神由比はカーブを打ち、守備が球を落とす。そして一塁二塁。


そして神子。神子は豪速球を二回連続空振り。


「頼む。打ってくれ」


最後の球が投げられた。そしてカキーンという音が鳴った。ライトへの特大ヒット…はあっさりと捕られた。


そして次のバッター、その次のバッターはあっさりと三振。


これで1ー1。


そしてたくさんの駆け引きの中、9回の表までやってきた。ここまでの点は6ー3で僕らは負けている。


バッターは魔藤。カウントは2アウト。そして満塁。


ここでホームランだけは駄目だ。


まずはベビードラゴン。これは魔藤は打たなかった。


次はフラッシュ。この球は太陽の光がバッターの逆光となっている際、投げられる唯一の球。魔藤は眩しくて目をつぶりながら打った。だが空振り。


「あと1アウト。これでお前を終わらせる。フラッシュドラゴン」


魔藤は目をつぶり打ったが、球はバットを回転し三振。


「よし。ここで3点取り返すぞ」


この回最初のバッターは神毛うどん。多分僕が打つのは来ないかもしれない。僕の回はこいつの前だから。


そして今、一塁二塁。神子は三振。そして次のバッターはヒット。これで満塁。そんな時に神雨かみう レイというほぼ未経験の人。彼はただの穴埋めだ。


魔藤の豪速球が神雨を襲う。だが神雨は余裕で球を打った。


「え!? な…なにが?」


三塁にいた神毛が戻ってくる。これで7ー4。


あと一点。そして今はまだ1アウト。


だが次のバッターは空振り三振。これであとは無くなった。僕の番まであと2人。


次のバッターはヒット。そして神由比がホームベースに戻った。これで6ー5


次のバッターが打てなければ負けという場面で神間かみま ゆえ。神間ゆえは本当はマネージャーだ。だがメンバー不足のため入りざるをえなかった。


「神間。頑張れ」


僕は必死に応援した。神間が打てば次は僕。打たなきゃ負けだ。


まずは豪速球。神間は空振り。次はカーブ。バットに当たるがファール。そして次もカーブ。これもギリギリでバットに当て、ファールになった。


「神間、頑張れ」


そして豪速球が飛んできた。そして打った!


「おーーーー!」


だが見事にキャッチされ、アウト。そして僕の暑かった甲子園は終わった。


そして僕はスカウトに強い高校 に招待されていたので向かった。


「それで、入るのは決めたのかな」


「はい…」


「じゃあ…」


「辞退させてください。僕はこの学校で大切な人に出会いました。ですので僕はここにいたい。だから、僕はこの学校で頂点をとります」


そして神國月夜に宣言した。


「次の甲子園。今度こそは優勝するから、その時は僕と付き合ってくれ」


「いいよ。でも今度は私もやる」


「何を?」


「野球だよ」


そして僕の暑い甲子園は再び始まる。

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