第13話 真のタイヴァス

「どうした! この程度なのか?」

「まだだ。おれは、まだやれる!」

 黒いズワルトゥのトンファーに対し、赤いルーフスはグローブ。リーチはほぼ同じはず。だが、わずかな差が大きく響いていた。

「見てられない。ぼくも戦う」

「ベルデ!」

「かかってこい!」

 パンチと槍が、トンファーにさばかれる。決定打を与えられない。

 緑色が加わっても、ズワルトゥの優位は変わらない。

「遅くなったわ」

 合流したカエルレウムも戦いに加わる。青色が弓を引き絞った。

「レウム!」

「そうだ。それでいい」

 矢をよけながら、黒い服の男が言った。

「ボサッとするな」

「ローザ!」

 同じく、桃色のローザヴイもルーフスたちのもとへつどった。さらに、水色のヘルブラオも戦闘に参加する。

「気を抜くんじゃないぞ」

「ブラオ!」

「いいぞ。全員で来い!」

 蹴りと剣を防ぎながら、ズワルトゥが不敵に笑う。

承知しょうち

「ジャッロ!」

 黄色のかぎ爪がくうを切る。一人ずつ戦いに加わり、ついに六対一になった。

 装備そうびにより、攻撃力とともに防御力も上がっている。とはいえ、それはお互いに同じ。

 圧倒的に不利なはずのズワルトゥは、諦めていなかった。何か明確な目的をもって、戦っていた。

 ダメージを受けながらも、トンファーで確実にダメージを与え返していくズワルトゥ。どちらもボロボロになっている。

「こいつらを倒したとき、オレは――」

「そうはいくか!」

 六人の心がひとつになった。赤色の前で、むっつの武器が合体する。

「ヴァルコイネンクラッシュ!」

 矢のような光がズワルトゥに命中。そして、爆発はしない。トンファーで弾を防いでいた。しかし、勢いが落ちない。

 武器がはじかれ、黒色が光に包まれる。

 そこには、装備そうびが解除され、崩れ落ちるズワルトゥの姿があった。

 しばしの静寂。

 みんな装備そうびを解除した。

 スカーフが大きな光のかたまりへと戻り、宙に浮く。

 ルーフスは、ズワルトゥにとどめを刺さない。

「間違ってもやり直せるのが人間だ」

 と、差し伸べられた手を、黒い服の男は取らなかった。

「おい。ルミ」

「なにかな?」

 空中にある光から声が響いた。装備そうびをしていないとき、精霊ルミはふわふわと浮いているのだ。

「もう、力はいらねえ。返してやるぜ」

「そう言ってくれると助かるよ」

「変な決まりがあるのね? また」

 黒い服の男のもとへと近づく、大きな光のかたまり。かがやきが一段と増した。

 精霊ルミが、ズワルトゥから力を抜き取ったのだ。

 これにより、獣が7体そろったことになる。


 クライダル軍団の空中要塞から、闇がのびる。

 山が、林が、生気を吸われたように沈んでいる。

 次にするべきことは決まっていた。

装備そうび!」

 光がむっつに別れ、それぞれのスカーフと武器に変わっていく。これまでと違い、力を取り戻したことで、装備そうびしても精霊ルミがその場に残っている。

 ルーフスたちはカラフルな獣たちに乗り込んだ。

 現れた空中要塞に対し、巨大な獣で立ち向かうヴァルコイネン。

「でも、ブラックはどうする?」

「ボクがなんとかするよ」

 精霊ルミが7体目の獣を操り、7体で合体するようだ。

「いくぞ。合体だ!」

 獣が変形していく。宙に浮きながら。

 アカが胴に。ミドリが右脚。イエローが左脚。アオは右腕。シアンが左腕。マゼンタがバックパック。そして、ブラックが翼に。

 合体により胸の操縦席が大きくなる。ルーフスのもとに、精霊ルミも含め全員が集結した。

「完成! タイヴァス!」

 真のタイヴァスが完成した。巨大な雄姿ゆうし。人型で翼の生えたロボットだ。

 完全な姿になったタイヴァス。宙を舞った。

 ふたつの力が激突する。

 空中要塞は巨大だ。

 タイヴァスは一歩も下がらない。

「覚悟しろ! ヴァルコイネン!」

 黒い空中要塞から、クライダルの声がひびきわたる。

 タイヴァスからも、負けじと声がひびく。

「その言葉」

「そっくりお返しするぜ!」

 精霊ルミの力ではなく、タイヴァスの機能によって声が大きくなっている。

「がんばれー」

「まけるな」

 各地で、子供たちがヴァルコイネンを応援していた。そして、大人たちも加わっていく。

「頼むぞ!」

「やってくれ。信じてるからな」

「いけー」

 空中要塞から、いくつもの筒状の弾が放たれた。

 この世界には存在しないはずの、ミサイルが飛んできたのだ。

「あれも、異世界の力なのか」

「昔に呼び出されたのを、クライダルが復元したみたいだね」

「その力も、ヨのものだ!」

 光のエネルギーを盾の形に変え、爆発を防ぐタイヴァス。空を飛び一気に加速し、光の剣で要塞に斬撃をあびせた。

 闇の弾をかわし、光の弾でお返しする。

 多くの攻撃をやり過ごし、ダメージを与えていくタイヴァス。

 ミサイルとミサイルが激突する。

「いける!」

「いまだ!」

「決めましょう」

「ルーフス!」

「やるぞ」

「いくでござる」

「心をひとつに」

 いつものように精霊ルミが言って、すでに六人、いや、ななつの心はひとつだった。

「タイヴァスビーム!」

 閃光がほとばしり、まばゆい光が全てを包み込む。

「おのれ、ヴァルコイネンめがっ」

 大爆発を起こす空中要塞。

 真の姿になったことで、技も強化されているのだ。

 中にいるはずのクライダルがどうなったかは分からない。


 合体を解除するタイヴァス。

 森の中。装備そうびを解除するルーフスたち。

 大きな光のかたまりがかがやきを増し、ふわふわと浮いている。

「どうしたんだ、レッド」

「グリーン」

「ブルーも」

 獣たちが眠りについていく。

「よくやってくれた。マゼンタ」

「シアンも、な」

「さらば、イエロー」

「ブラックもよくやったよ」

 色がくすみ、灰色に近くなっていく獣たち。

 それは、戦いの終わりを意味していた。


「ああー。どうしたらー」

 命令をする者がいなくなり、イモータルは暇を持て余していた。

 そこに近付く、黒い影。

 ズワルトゥが声をかける。

「よう」

 その顔に邪悪さはかけらもなかった。


 広大な草原。

 脳裏によみがえる、数々の戦い。

 寝転がるルーフスは、戦いを思い出していた。

「風邪ひくよ」

「わたしも混ぜて」

 ベルデとカエルレウムがやってきた。

「何をやっている」

「たまにはいいだろ」

 ローザヴイとヘルブラオもやってきた。

「日光浴でござるな」

 ジャッロがやってきて、全員集合。

「置いていかないでよ」

 精霊ルミを忘れてはいけない。

「忘れてなんかないぜ」

 ルーフスは、仲間たちに囲まれ笑顔になった。

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旋風炎陣ヴァルコイネン 多田七究 @tada79

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