第12話 メゲとベコムの忠義

 黒い巨大な要塞の中。

「ワタシにやらせて」

「メゲだけには任せられません。ぜひ、ワシも」

 ベコムも同じく申し出た。

 もちろん、イモータルは参加しない。何を言っていいのか分からない様子だ。

「わかった。好きにするがいい」

 猫の意匠をもつ魔族も、鼠の意匠をもつ魔族も、悲壮感はない。むしろ、すがすがしささえ感じられる。

 幹部2体が、ヴァルコイネンのもとへ向かうことになる。

 その前に、クライダルが両手をのばす。


「街の東にある林まで来い、か」

「うさんくさいけど」

「行くしかないよ」

 ベコムが現れ、ズワルトゥが呼んでいると告げ、姿を消したのだ。

 その場所へ六人で向かう途中で、メゲが現れた。

「どこへ行こうっていうの?」

「こんなときに」

「ここは任せて」

装備そうび!」

 ローザヴイとカエルレウムが残り、メゲの足止めをすることになった。

 ベコムの策でヴァルコイネンが分断されたことに、まだ気づく者はいなかった。

 メゲのところにいるのは、桃色と青色。

 2対1にはなっていなかった。魔物が出てきた。バッタのような。名はバッター。

「バッターッ」

「2対2で、ちょうどいいじゃない」

「はたしてそうかな?」

「頑張ろうね」

 赤色。緑色。水色。黄色。先を急ぐ四人。指定の荒野にたどりつく。

「待っていましたよ」

 そして、ベコムのとなりにクライダルが自ら現れた。

「クライダル!」

「お前たちの力、見せてみよ」

装備そうび!」

 肩を怒らせて構える赤色。

 戦いが始まる。

 さまざまな色は入り乱れない。きれいに揃った動きをしていた。

「ズワルトゥはいないのか」

 パンチを食らい、体勢を立て直すベコム。

「よもや、これほどとは。本当に呼んでおくべきだったか」

 メゲのほうだけではなく、こちらにも魔物がいた。カミキリムシのような姿。槍が魔物を襲う。パンチが炸裂。次々と、赤色と緑色が連携を決める。

「ここは、ひとまず――」

 魔物およびベコムが劣勢になり、クライダルに引くように頼む。

 クライダルは強い。しかし、ベコムと魔物が足を引っ張る。魔物の名は、ヒラズゲンセイ。

「ヒラズゲンセイッ」

 その魔物に、水色と黄色が攻撃を仕掛けた。剣が道を切り開き、かぎ爪が牽制する。

 道を作ったことで、四人の目的はひとつになる。

 ルーフスとベルデとヘルブラオとジャッロは、クライダルに狙いを定めた。

 様々な武器を素手で受け止め、パンチやキックを繰り出す魔族の王。とてつもなく重い一撃に、ルーフスたちがひるむ。

「あくまでヨに仇なすというのか」

 回し蹴りからの飛び蹴りで、緑色と水色がよろける。つづいて右ストレート。赤色はガードで精一杯だ。黄色がすこし距離を取る。

「いくでござる」

 かぎ爪をうまくやりすごし、クライダルの蹴りがジャッロをとらえた。

 とはいえ、四人を相手にしては、さすがのクライダルも長時間優勢を保つことは厳しい。

 クライダルは武器を使っていない。

「クライダル様! お引きくだされ」

 ベコムは、ふたたびクライダルに引くように頼んだ。

「お前もあとで来い」

「はい」

 短い言葉を残して、クライダルはその場をあとにする。

 すぐに、巨大な空中要塞が姿を現した。


「いまよ!」

「ここだ!」

 青色と桃色がうなりをあげる。蹴りで吹き飛ばした魔物に、矢が降り注ぐ。さらに、キックが次々と決まっていく。

「ぐほっ」

 起こる爆発。

 二人が協力して、バッターを倒したのだ。

「やるわね。でも」

 まだメゲは戦う気だ。

「もうやめて」

「甘さは命とりだぞ」

 長い棒がくうを切る。

 肉弾戦を挑み、距離を詰める桃色。青色はすこし離れたところから狙いを定める。

 カエルレウムが蹴りでアシストし、ローザヴイが弓矢で決めた。

「爪が、傷ついちゃうじゃない」

 メゲが倒れ、閃光がはじける。


「こんな虫、知らないぞ」

「あとで調べよう」

 赤色がパンチを繰り出し、緑色が槍を突き出す。

「喋っている暇があるなら」

「倒すでござる」

 水色が剣で切り裂き、黄色がかぎ爪で仕留める。ヒラズゲンセイが倒れた。

「ぐはっ」

 破裂音がひびく。光がまたたいて、敵が残り1体になる。

「もういいだろう」

「降参しろ」

 ルーフスたちが降参を求めるも、ベコムは聞き入れない。

「かかってきなされ」

 執拗しつようにカードで攻撃をつづけるベコム。

 カードを剣で防ぐベルブラオ。ベルデが槍を突き出して、ベコムの体勢を崩す。

 のびるふたつの腕。ジャッロの一撃とともに、ルーフスの攻撃が当たった。

「申し訳ございません」

 ベコムが倒れ、光と熱が放出された。


 様子を見ていたズワルトゥが現れた。

「本当にいたのか」

「あいつらと仲良しごっこをする趣味はない」

 黒い服の男は、すでに装備そうびしている。スカーフで通信を聞いていたようだ。

「四人に勝つつもりでござるか?」

「……」

 ジャッロには返事が返されない。

「勝負だ。ルーフス」

「ああ。わかった」

 ルーフスとズワルトゥの戦いが始まる。

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