第55話 Re.エアポケット(Inter-subjectivity_2)

「霧崎! 寝るな!」


 教室に見立てられた会議室。

 ぱらぱらとひっきりなしにあちこちで響いていたプリントをめくる音が一瞬止まり、やがてくすくす笑い声が沸いた。

 めずらしー。


「……すみません。久々にぼーっとして……」

「気合が足りん。お前、中央中等行きたいんじゃながったか」

「いえ、ちがいます」

「ああ、わりい。志望校どこだいね」

榛名はるな学院です」

「榛名ぁ? お前なら特進も余裕だろうに」

「いや、おれ本番弱いので……」


 うそ。意外~。

 苦手なんてなさそうに見えるのにな。

 好奇めいた声がざわざわと上がる。


 苦手が無い人間なんて、いるわけない。


 漢字テストは無限に沸く。

 夜は長い。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る